最強帝京大の喋れなかった主将の言葉力 4連覇の裏で悩んだ、部員150人へ「どうしたら伝わるか」【ラグビー大学選手権】
相馬監督が無言の労い「言葉はいらないですよ」
実はこれまでスクラムに苦戦したのは、審判も影響していた。イメージ通りに組めても注意を受け、反則をとられることも。綻びを突かれ、そのまま敗れるのがパターン。決勝で発揮されたのが、またも主将の言葉力。審判とチームの間に入り「何がいけないのか」「判断基準は何なのか」を明確にした。
相手に合わせず、帝京流のスクラムにフォーカス。意図した組み方ならどこにも負けない。後半20分を過ぎ、FW8人の心と体がガチっとハマる音がした。最前列の森山は「8枚のまとまりが対抗戦と違う。1人が負けたとしても8枚がまとまったら勝てる。それがスクラム」と背後からの圧力を実感。FW戦で優位に立ち、後半3トライで突き放した。
前回大会で史上初となる2度目の3連覇を果たし、記録を更新する4連覇。相馬監督も涙が止まらない。
「今シーズンは本当にいろんなことがあって、そのたびに強くなって立ち上がるキャプテンをチームが一丸となって追いかけていく。そんなシーズンだった。青木が会見で『何から話していいかわからない』という状態だったのが今季のスタート。想いを言語化するのも難しかったのだと思う。
ただ、段々と言葉を使えるようになって、より深く考えるようになって、自分の考えをチームに伝える。そういう言葉の力を持ち始めた。もともとフィールドでは圧倒的な力があったけど、青木が何を考えているのか仲間が理解し始めて、そこに向かってチームが進むようになった。今は立派に自分の考えを自分の言葉で話せるようになりました」
グラウンドで嬉し涙を拭う選手たちが、指揮官の目に焼き付いた。「言葉はいらないですよ。一人ひとり抱きしめたいです」。青木は高校から続く“個人6連覇”を達成。「一番体を張ろうと思って80分間プレーした。同じ相手に何度も負けたくない。帝京らしさを出せたと思う」。言葉から王者のプライドが溢れていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)