高校バスケで存在感放った留学生たち 日本で何を学び、何をもたらしたのか…当事者に聞いた本音【ウインターカップ】
誰もが認める主将になった留学生も
様々な壁を乗り越え、誰もが認める主将にまで成長した留学生もいる。男子の大分代表、柳ヶ浦のボディアン・ブーバカー・ベノイット(3年)はセネガル出身。来日した当初は全く日本語が話せず、中村誠監督が最初に教えた言葉は「水」だった。それが今ではほぼ全てのコミュニケーションを日本語でこなし、主将として審判や相手ベンチにも「よろしくお願いします」と日本語で頭を下げた。
ベノイットは24日、京都精華学園との1回戦途中に左手首を負傷し交代。68-73で敗れた後も左腕を三角巾吊るしながら、真っ先に敵将や観客に挨拶した。中村監督は「彼は本当にどこに出しても恥ずかしくない男。見られているという意識を常に持って行動してくれた」と絶賛。その人間性は保護者からも高く評価され、主将就任時に「外国人なのに?」という疑問の声は一切上がらなかったという。
男子のベスト5にも選ばれ、鳥取城北の県勢初の準優勝に貢献したハロルド・アズカ(2年)は選手として成長するために日本を選んだ。昨年のインターハイ前にナイジェリアから来日。「世界でも日本人たちはめちゃくちゃハンドリングがうまい。アズカももっとハンドリングが欲しかった。高校生のレベルはナイジェリアよりも日本の方が全然いいと思う」。日本語でスラスラと意図を明かした。
身長2メートルのセンターだが、ボール運びもこなす万能選手。憧れはNBAの大スター、ジェイソン・テイタム(セルティックス)だ。将来的にはBリーグで活躍し、NBA入りするという夢への道筋を描く。渡米すればポジションはシューティングガードやスモールフォワードになると予想。日本でハンドリングを磨き、引き出しを増やすことを狙う。
鳥取城北の河上貴博監督は「手足の長い、身体能力の高い選手と一緒にプレーすることで、考え方やパス一つとっても変わってくる」と留学生が他の部員に与える効果を指摘する。対峙する日本人選手にとっても、手強いライバルの存在は成長の糧になる。24日の女子2回戦で京都精華学園に59-101で敗れた県立山形中央の宮林美優(3年)も「打倒・留学生」という思いで努力を重ねてきた。
「自分よりも身長が高い選手はいっぱいいる。シュートフィニッシュの工夫や3ポイントシュート(3P)の精度を上げていかないといけないと感じた」。フィジカルを鍛えることはもちろん、ポップアウトからの3Pやクイックシュートを磨いた。2年連続の高校3冠を成し遂げた京都精華学園を相手に3本の3Pを沈めるなど13得点。高い壁を越えることはできなかったが、成果の一端を示した。
男子の頂点に立った福岡大大濠は、留学生なしで戦い抜いたチームだった。身長206センチの渡邉伶音(3年)は準決勝の後、「日本人だけの僕たちが勝つことによって、『自分もできるかもしれない』と思ってくれる子どもが絶対に増えるし、それが大濠の魅力だと思っている」と力を込めた。意気込み通り、3年ぶり4度目の日本一に。留学生なしでも勝てると結果で示した。
大会期間中、留学生が高い身長と体の強さを武器に、日本人選手を圧倒する場面を何度も目にした。理不尽に思う意見が出るのもわかる。ただ、「留学生を入れれば勝てる」という単純なものでもない。チームとして機能するためには、異国の環境に適応しようとする本人の努力、そしてそれを支え、ともに成長しようとする周囲の受け入れ態勢が必要だ。そんな陰の奮闘にも目を向けてほしい。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)