日本語が全くできなかった留学生が誰もが認める主将になるまで 柳ヶ浦のベノイットが貫いた真摯な姿勢【ウインターカップ】
日本語が全く話せないところから誰もが認めるキャプテンへ
柳ヶ浦に入学するため、3年前にセネガルから来日。当時は全く日本語が話せず、中村監督が最初に教えた言葉は「水」だった。それが今では難しい話も聞き取れるように。コミュニケーションはほぼ日本語でこなしている。1年生の頃はキャプテンを任せることになるとは想像もしていなかったという指揮官。「こいつかな」と任命を決めたのは、昨年のウインターカップ予選直後の練習だった。
新チームとして最初の日。中村監督が見たのは、黙々と練習をこなすベノイットの姿だった。「留学生は彼1人しかいなかったので、もう40分間フル出場。誰よりも一番疲れているはずなのに、2時間の練習を1個もメニューを休まずに全部こなしていた」。真摯な姿勢はチームメートも保護者も認めるところ。主将就任時に「どうして?」「外国人なのに?」という疑問の声は一切上がらなかった。
任命を伝える時、中村監督は「僕でいいんですか?」という言葉が返ってくると予想していた。しかし、ベノイットは「僕がやります」と力強く言い切った。覚悟を持って臨んだ1年。「留学生がキャプテンということで注目もされてきたが、彼は本当にどこに出しても恥ずかしくない男。見られているという意識を常に持って行動してくれた」と指揮官は称える。
「日本では礼に始まり、礼に終わるから。どんなに悔しくてもやりなさい」。主将就任時に中村監督から伝えられた教えを、ベノイットは最後まで徹底した。「最後も本当は悔しさの方が上回っていたと思う。痛いし、悔しいし、というのがあったと思うが、本当に最後まで顔を上げてやってくれた。立派だった」。試合終了の時、指揮官は主将と握手を交わした。期待に応えたリーダーを労うように。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)