たった5人で挑んだ全国大会 退場で1人減っても戦い抜いた和歌山南陵、敵将の心も震わせた40分間【ウインターカップ】
バスケットボールの第77回全国高校選手権「SoftBank ウインターカップ2024」が23日、東京体育館など都内の2会場で開幕した。男子1回戦では、4年連続4回目の出場となる和歌山南陵が2年ぶり3回目出場の県立長崎工業に64-80で敗戦した。3年生わずか5人で挑んだ全国大会。「5人というのを言い訳にしたくない」と決意し、ファウルアウトで4人になっても諦めずに戦い抜いた姿は、敵将の心も震わせた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
SoftBank ウインターカップ2024
バスケットボールの第77回全国高校選手権「SoftBank ウインターカップ2024」が23日、東京体育館など都内の2会場で開幕した。男子1回戦では、4年連続4回目の出場となる和歌山南陵が2年ぶり3回目出場の県立長崎工業に64-80で敗戦した。3年生わずか5人で挑んだ全国大会。「5人というのを言い訳にしたくない」と決意し、ファウルアウトで4人になっても諦めずに戦い抜いた姿は、敵将の心も震わせた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
残酷な笛が鳴った。52-54で迎えた第4クォーター残り6分42秒。自陣リング下で体を張った和歌山南陵の紺野翔太(3年)に5つ目のファウルが宣告された。一瞬の沈黙。客席からは「えっ……」と息をのむ音が聞こえた。ベンチに控え選手はいない。4対5の絶望的状況。だが主将の二宮有志(3年)は「4人になっても試合はまだ終わっていない。必ず勝機はある」と鼓舞し、残りの3人も呼応した。
「最後までやろう」
コートを駆けながら声を張った藤山凌成(3年)が放った3ポイントシュートは、試合終了のブザーとともにリングに吸い込まれた。最終スコアは64-80。4対5という絶対的不利な状況でも決して下を向かなかった証しだ。敵将の寺田祥監督も14得点を挙げた藤山らを呼び止めて握手。「僕たちには計り知れないものがあった。凄く手強い相手だった。敬意を込めて握手させてもらった」と感動を伝えた。
和歌山南陵は2年前、経営難などを理由に新規の生徒募集を停止。当時1年生だった酒井珀(3年)は「本当に南陵やめたいなと思った」と正直に振り返る。後輩が入ってくることなく3年になり、残ったのはたった6人。それでも今夏のインターハイに出場して1勝を挙げ、大きな話題となった。しかし、苦難は続く。今大会の約1か月前、留学生のアリュウ・イドリス・アブバカの欠場が決まったのだ。
進路の関係でナイジェリアに一時帰国。今大会の前には戻ってくる予定だったが、間に合わないことがわかった。今までのフォーメーションが使えなくなり、今月に入って最初の練習試合は「本当にボロボロだった」(藤山)。しかし「5人というのを言い訳にしたくない」と全員で決意を固めた。劣勢になるのは百も承知。「どれだけ点差が開いても僕たちは我慢して行けるぞ」と声をかけ合った。