「最初は日本が好きじゃなかった」 食事に言葉に…悩んだ留学生が日本の部活で知った青春の味
井手口監督の方針は「一緒に成長しよう」
「センセイ」とは井手口監督のこと。その指揮官は「一緒に成長しよう。留学生だからと特別扱いは一切しない」という方針。主将の山口瑛司(3年)も「留学生としてではなく日本人と同じように友達として接している」と明かす。
「僕がチームに必要な存在だと、センセイは言ってくれた」。監督や仲間の思いにシェッハは献身的なプレーで応え、20分間出場したこの日も攻守に体を張った。
もう1つ、日本に留まらせた思い出がある。昨年のウインターカップ。決勝で開志国際(新潟)に敗れ、優勝を逃した。あの時、応援席から見た光景が忘れられない。「彼らがチャンピオンになった時、向こうの留学生を見るととても幸せそうだった」。そして、心に決めた。「ここに残ってベストを尽くす。来年は僕らがチャンピオンになる」と。あれほど嫌だったキツイ練習に汗を流し、1年後の今日、誓った通りチャンピオンになった。
「チャンピオンになれてとても幸せ。神に、そしてチームメートに感謝したい」。帰国したいと訴えるほど悩み、苦しんだ日々を乗り越えて掴んだ栄光。「来年はもっと日本語を勉強したい」。にこやかに誓った表情は充実感に満ちていた。
時に“勝利至上主義”などと否定的な意見も上がる高校のスポーツ留学生制度。「日本に来て何を学ぶのか」と問う声もある。シェッハの場合、慣れない異国の地で「何もできない自分」と向き合うことから始まった。そんなシェッハを、チームメートは友達として、仲間として励まし続けた。
出身も国籍も関係ない。一緒に成長しよう――。歓喜に湧き、熱く抱き合った彼らの姿は、そんな井手口監督の言葉と日本の部活の良さを体現していたように見えた。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)