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中3でテニス全国V、父の教えで知った「考える」面白さ 人生を懸ける仕事に導いた部活での経験

考えることの面白さに気づいた中3の夏

 中学3年の夏、地区大会団体戦の決勝でも、佐藤さんはまたもその相手に敗れて全国大会への切符を逃した。しかしその翌日の個人戦の決勝、再び相まみえることになったライバルから初めて白星を奪う。その後の北海道大会でも佐藤さんが勝利。全国大会では直接対決はなかったが、佐藤さんはこの年の全中個人戦で日本一に輝いた。

「一生勝てないと思っていた人にも、何かを頑張ることで勝てる時があると知りました。その『何か』というのは、当時は戦略でしたが、勝つための道筋は1つではないと学びました」

 佐藤さんはトリノ冬季オリンピックフィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんを例に挙げて説明する。

「トリプルアクセル、4回転ジャンプが飛べるからといって優勝できるわけではないし、ミスをしたら勝てない。荒川さんは3回転ジャンプの数は少なかったけれど、ミスの確率の少ない構成をして、総合点が高かった。その戦術が成功したわけですよね」

 戦術次第で日本一にもなれる――。その経験は、考えることの面白さを佐藤さんに気づかせた。

「考えることによって可能性を広げられることにすごく魅力を感じました。陸上部の顧問の先生が変わったとたん、急にインターハイに出場する学校があると聞きます。陸上は最も身体能力が結果に直結する競技だと思うのですが、その陸上競技の順位ですら戦略によって覆る。とても夢がありますよね」

「よし、考えること自体でお金がもらえる職業につこう」(『書く仕事がしたい』)と決意した15歳の少女は今、ライターとして考えることを仕事にしている。

 もう1つ、佐藤さんをライターの道に導いたのは、アスリートにはいずれ引退する時が来るという現実だった。著書『書く仕事がしたい』には、「子どもながらに、『一生を懸ける仕事に、年齢制限があるのは嫌だ』と思ったのです」と書かれている。

「私は試合が大好きで。練習はそれほど好きではなかったのだけど、試合だけなら毎日やっていたいというくらい大好きでした。なぜかというと、試合中は一番いろいろなことを考えて、いろいろなことを試すことができる。要は、仮説と検証を何度も繰り返せるのが楽しかったんです。試合中は集中力も高いので、一番上達するんですよ」

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山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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