八丈島唯一の高校サッカー部と島民の物語 部員14人をサポート、離島ならではの交流文化とは
小中高と進学するたびにサッカー部員が減る現状
高橋監督も、選手に自信と喜びを体感させる1勝を諦めるつもりは、毛頭ない。人数不足で不参加だった1月も少人数で内地へ渡り、フットサル大会に参加。しかも、前日と当日の朝には、今回のインターハイ支部予選に合同チームで出場していた都立芝商業高と第一商業高の合同練習に参加させてもらえるように手はずを整えていた。
島では小中高と進学するたびにサッカー部員が減っていく傾向にあり、優秀な選手が出てきても島外へ進学するなど戦力補強も難しいが、島の中学生との練習や練習試合は積極的に行い、交流を深めている。現チームでの最後の挑戦となる高校選手権支部予選に向けても「お金の問題はありますけど、今年は選手権前に内地に来て合宿を組んで、午前2試合、午後2試合とか、たくさん試合を組んで帰りたいと思っています」と強化計画を立てていることを明かした。
「八丈島とサッカー」で言えば、少し知られたところでは、木場克己トレーナー主宰の合宿があり、日本代表で活躍するDF長友佑都(FC東京)が自主トレーニングで走った島北部の坂は「長友ロード」と命名されている。また、2010年に奥山武宰士がアルビレックス新潟とプロ契約を結び、初の八丈島出身Jリーガーとなったことなどが挙げられる。
内地との交流を含め、サッカーは島の大人の楽しみであり喜び。島の子の活躍ほど嬉しいものはないだろう。島でサッカーの環境を整えてくれる大人の期待を知っているからこそ、慣れない試合でプレッシャーを感じて浮足立ち、一方で意地の反撃も見せられた。
次こそ勝利を――。公式戦の刺激と悔しさを抱いて眠りについた船を下り、また島の大人たちの協力を得ながら、八丈高は最後の舞台での再挑戦に向かう。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)