高校球児も「体が小さくても活躍できる」 163cmの慶応主将・大村昊澄が甲子園に描く夢【センバツ】
18日開幕のセンバツ高校野球(甲子園)。「THE ANSWER」では5年ぶり10度目の出場となる慶応(神奈川)の注目選手を連日紹介する。最終回は主将の大村昊澄(そらと)内野手(新3年)。163センチ、68キロと小柄な体格でチームを牽引する。「子供たちに希望を与えられる存在になれたら」と甲子園を目指すきっかけに“先輩”主将の姿があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・中戸川知世)
慶応の注目選手紹介、初戦は21日・仙台育英戦
18日開幕のセンバツ高校野球(甲子園)。「THE ANSWER」では5年ぶり10度目の出場となる慶応(神奈川)の注目選手を連日紹介する。最終回は主将の大村昊澄(そらと)内野手(新3年)。163センチ、68キロと小柄な体格でチームを牽引する。「子供たちに希望を与えられる存在になれたら」と甲子園を目指すきっかけに“先輩”主将の姿があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・中戸川知世)
グラウンドのどこにいても聞こえるほど、大きく通る声でチームを引っ張る大村。昨夏、2年生と引退する3年生の投票と首脳陣の意向で主将に選ばれた人間性は目を見張るものがある。だが、道のりは平坦ではなかった。新チーム始動の日、森林貴彦監督から言われた言葉がある。「ベンチキャプテンになるかもしれない」
ベンチキャプテンとは文字通り、控えとしてチームを支える主将のこと。「実力が足りないことは分かっていた。でもベンチキャプテンでは絶対終わらない」。これが、転機になった。ハートに火が付き、課題の打撃強化に着手。バットを振る量はもちろん、一番は意識を変えた。生き残るための方法を「2番打者」に絞った。
「ヒットを打ちたいと思ってやってきたけど、どんな形でもいいから塁に出る」。泥臭くても、自分を犠牲にしてもチームのために。打撃スタイルを変えると自然と安打も増えた。「2番・二塁」の定位置を掴んだ秋は関東大会3試合、打率.455で4強に貢献。今や慶応打線には欠かせない戦力になった。
聖地で見せたい姿がある。2017年夏の甲子園、現地で観たのは大阪桐蔭・福井章吾(現トヨタ自動車)の本塁打。後に慶大で主将も務めた168センチの先輩に163センチの自分を重ね、甲子園に憧れた。「小さい子供たちに体が小さくても活躍できることを見せたい」。今度は自分が背中を見せる番だ。
憧れの福井からはセンバツ出場決定した夜に電話があった。「キャプテンでチームは変わるぞ」。アマ球界きっての名主将からの言葉に自覚をより濃いものにした。帽子のツバ裏には「日本一の主将」の文字。秋の関東大会で負けた時、「絶対センバツで日本一になりたい」と思いを込めて書いたものだ。
「日本の高校野球を変えたい」と常々語ってきた大村。慶応伝統の“エンジョイ・ベースボール”の精神を、未来の球児たちにプレーで示す。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)