部活動の地域移行は「子供のため」であるべき “働き方改革”先行の流れに懸念の声も
地域クラブ活動の成否は「首長が街づくりとして取り組むことが重要」
市では導入にあたり、地域クラブ活動企画委員会を発足し、有識者による勉強会を21年8月に開催。文化庁の『文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』作成検討会議座長で、元学習院大学教授の長沼豊さんを招いて講義してもらった。
地域移行の必要性について長沼さんは「教員の働き方改革が背景にあるが、少子化の影響もかなり大きく、最小限に抑えて持続可能な活動環境を考えないといけない。部活動の過熱化も問題だ」と説明。地域クラブ活動の成否については「学校教育ではなく社会教育なので、教育委員会や学校だけで頑張っても駄目なんです。首長が街づくりとして取り組むことが重要で、そういう地域こそ上手くいくと思う」と述べた。
今、多くの自治体で頭を痛めるのが指導者の確保だ。
文科省は当初、23~25年度を「改革集中期間」とし、3年間で地域移行を進める計画だった。
しかし昨年末の学校部活動と地域クラブ活動のガイドライン策定を前に広く意見を募ると、自治体関係者らから「3年間の移行達成は現実的に難しい」「中学校の部活をお願いできる人材が不足している」といった意見が相次いだ。
このため文科省は受け皿が整わない地域に配慮し、この3年間を移行可能な地域から進める「改革推進期間」に改めた。
白岡市の場合、初年度のモデル事業では外部指導者や兼職兼業の教師ら22人が休日の活動に立ち合い、2期目の今年度は民間のスポーツデータバンク社に委託し、指導員を派遣してもらった。市では来年度中にも、公立中学4校合わせて35ほどの部活動に再編する計画があり、より多くの指導者が必要になる。
文科省は地域クラブ活動の指導者を確保するため、学校部活動で活用してきた部活動指導員や外部指導者の登用を呼びかける。
しかし、白岡市教育指導課で地域クラブ活動を担当する石島隆志指導主事によると、人材整備は容易ではない。地域の指導者に依頼すると「やりたいようにやらせて」「適当にやればいいでしょ」といった不適格な人もいるそうだ。「市や学校の方針に沿い、責任を取るから自分たちに任せてほしいという覚悟が必要。でも、そういう人材はなかなかいませんね……」と苦笑する。