30年前に県優勝も廃部の現実 人口5万人の白岡市、部活動の地域移行を先行実施する理由
2期目は生徒の希望が多かったダンスとプログラミングを新設
モデル事業初年度は軟式野球、バスケットボール、バレーボール、ソフトテニス、剣道、吹奏楽で導入。顧問教師らと相談し、移行しやすい競技を選んだ。昨年10月から活動している2期目は軟式野球とバレーボールが外れ、代わって陸上、卓球、ソフトボールが加わった。さらに生徒の希望が多かったダンスとプログラミングを新設し、剣道、吹奏楽とともに合同部活動に組み入れた。石島指導主事は「顧問が休日の指導を負担に感じている競技を中心に選定しました。部活動指導員ら全員が外部の人で教師はいません。ダンスなど4つの合同クラブは少子化をにらんでの設置」と説明した。
部活動の地域移行は、少子化による部員不足や教員の長時間労働が背景にあり、白岡市の取り組みはこの両方と向き合うためのシミュレーションとも言える。
文科省の外局であるスポーツ庁と文化庁の有識者会議が、それぞれ昨年6月と8月に運動部活動と文化部活動の地域移行に関する提言をまとめ、公立中学校の休日の指導を地域に移行する改革案を打ち出した。
文科省は当初、地域移行を達成する23~25年度を「改革集中期間」と位置付けた。しかし指導者や施設の確保などが難しく、受け皿が整備されていない自治体に配慮し、昨年12月に「改革推進期間」に改めた。達成時期の目標は設定せず、地域の実情に応じながら早期に実現させる方針に変更した。
白岡市はモデル事業に参加する段階から環境を整えた。練習場所は平日と同じく学校のグラウンドと体育館を使い、指導員は市が委託した団体に派遣してもらった。PTAのOBが設立した任意団体とあり、学校や生徒、保護者との連携を重視した運営を行ったことで、教員の負担が軽減されたそうだ。
しかし、市側が22年度から合同部活動など事業規模を拡大する方針を示すと、負担が大きいとの理由から昨年度で撤退。新たな委託先を事業提案方式で募り、文科省と連携し部活動支援事業などを手掛けてきたスポーツデータバンク社と昨年7月に契約した。今年度は市の生涯学習部の人材バンクに“地域クラブ活動”という項目を増設し、指導員を募ってはスポーツデータバンク社に登録してもらうやり方に変えた。
市では21年度、地域移行に向けた説明会を各方面で繰り返し、生徒には最多の10度、保護者や教職員、新入生保護者にもそれぞれ4度ブリーフィングした。石島指導主事は「やればやるだけ浸透し、理解してもらえるようになりました。地域移行へのハードルが徐々に下がってきたのを感じる」と手応えを口にした。