全国制覇を喜ぶ前に敗者のもとへ 開志国際・介川アンソニー「喜ぶのは後でもできる」【ウインターカップ】
バスケットボールの第75回全国高校選手権「SoftBank ウインターカップ2022」の男子決勝が29日、東京体育館で行われ、開志国際(新潟)が福岡第一(福岡)に88-71で勝利した。夏のインターハイ決勝で1点差で敗れた相手にリベンジを果たし、男女通じて新潟勢初優勝。両チームトップの30得点を記録した介川アンソニー翔(3年)は、優勝の喜びを仲間と分かち合う前に、自分を高めてくれたライバルへのリスペクトを示した。
ウインターカップ男子決勝
バスケットボールの第75回全国高校選手権「SoftBank ウインターカップ2022」の男子決勝が29日、東京体育館で行われ、開志国際(新潟)が福岡第一(福岡)に88-71で勝利した。夏のインターハイ決勝で1点差で敗れた相手にリベンジを果たし、男女通じて新潟勢初優勝。両チームトップの30得点を記録した介川アンソニー翔(3年)は、優勝の喜びを仲間と分かち合う前に、自分を高めてくれたライバルへのリスペクトを示した。
40分間、走り続けた後だった。悲願の全国制覇。チームメートは歓喜の輪をつくり、感情を爆発させた。だが、介川が真っ先に向かったのは敗者のもと。「本当にありがとう。代表でも頑張ろう」。福岡第一の轟琉維(3年)と抱き合い、感謝を伝えた。
夏のインターハイ決勝で敗れた因縁の相手。秋のトップリーグも制し、3冠を狙う強敵だった。ライバル撃破に浸るよりも優先した行動。「本当に嬉しかったけど、相手へのリスペクトがあった。チームメートと喜ぶのは後でできるので、まずリスペクトを示そうとした」。U-18日本代表でもあり、今大会屈指の注目選手だった轟とは旧知の間柄だった。
日本人の母と米国人の父を持ち、日本で生まれ育った。中学1年の頃に渡米したが、コロナ禍のあおりを受け、家族とともに帰国。昨年3月から開志国際に編入し、一躍注目選手となったが、目標の日本一には届かず悔しい思いをしてきた。「本当に優勝したいなら、中途半端ではダメだと実感した。命がけで頑張ってきた」。体もひと回り大きくした。
富樫英樹コーチは「この4か月、悔しさを持って、全員で『どうやれば福岡第一に勝てるか』と考えてきた」と、心を燃やした教え子たちの努力を明かす。悲願を達成する最後のチャンス。介川は歯を食いしばり、フル出場した。
王者の厳しいマークを受けた前半。ターンオーバーが許したが、仲間に支えられる展開が続いた。「今はディフェンスを頑張るぞ」。できることに徹した。チャンスを待ち続け、終わってみれば30得点。「我慢強くなれた」。新潟勢初のウインターカップ制覇に大きく貢献した。
「インターハイで福岡第一さんに負けて悔しい思いをして、みんなで頑張って練習してきた。高校バスケを気持ちよく終えることができて嬉しい」。轟に対しても「大学もあるし、また代表にも呼ばれると思うので」と共闘を心待ちにしている。強敵の存在があったからこそ重ねられた懸命の努力。最後に、最高の景色が待っていた。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro-Muku)