挑戦すら叶わなかった1年前 高校3冠をあきらめない女子ホッケー部の夏「先輩に金メダルを」
泣きながら食らいつく雑草組が起爆剤に
1年生から試合に出る “生え抜き”エリートがいる一方、「初心者を主力選手に育て上げる」のが岐阜各務野の伝統だ。
3年生8人のうち3人が高校からホッケーを始めた初心者。前キャプテンの河田も、現チームの副キャプテン・浅井美月(3年)も、初心者からチームの主力、そして年代別日本代表にまで成長した。
ホッケー初心者を3年間でどのようにトップレベルに育て上げるのか。
長尾監督は「時代に逆行しているかもしれませんが」と前置きしながら、「練習量ですね」と笑う。
ドリブル、パス、シュートなどの基本練習、練習試合や戦術トレーニングを計2時間ほど行い、疲れが溜まった状態で、「補強」と言われる、重心を落として行うフットワークをたっぷり1時間続ける。長尾監督の恩師でもある安田善治郎さんが指導していた頃から50年以上変わらないこの練習が、各務野の「走るホッケー」を支える原動力だ。
「補強」に黙々と取り組む選手たちの顔からはみるみる玉のような汗がこぼれ落ちる。すっかり暗くなったホッケー場には、選手の苦しげな息遣いと仲間を励ます掛け声だけが響きわたる。
もちろん最初から全てのメニューをこなせるわけがない。1年生は基礎練習からスタート。徐々に量と強度を上げていく。それでも、初心者には相当ハードだ。
「浅井は、小学校からやっている子とはキャリアが6〜9年違うわけですから、彼女たちが簡単にやってのけるプレーができない。できない自分が悔しくて悔しくて、泣きながら歯を食いしばって練習していました。そういう気持ちを前面に出す選手を最近は見なかったので、これは頼もしいなと思って。副キャプテンに指名しました。彼女は各務野を象徴する存在です」
入部間もない頃、「ついていくだけで精一杯だった」浅井は、2年の選抜大会で初めて先発出場を果たす。「自分が初めて試合に出た大会で、日本一になることができた。全国大会で優勝できたことが心に残っているからこそ、自分たちの代になった今年は、先輩たちの思いを引き継いで、3冠が獲りたい。
選抜を観た方から、勝ちたい気持ちがプレーに出ていたいい試合だったと言っていただいた。インターハイでもたくさんの人を笑顔にできるような思い切ったプレーで、優勝できるように頑張ります」と力を込める。
岐阜各務野には、インターハイの1か月前から代々行う「ヤッケ走」という練習がある。通常の練習をする前に、冬用のウインドブレーカーを着て走り込みをし、暑さに負けない走力とメンタルを培う。
「ヤッケ走が始まると、『夏が来た!』って感じです」。キャプテン山藏の日に焼けた笑顔が弾ける。
「つらい時も走らなきゃいけない、それが勝つということにつながるということを、必死に練習する先輩たちの姿から学んできた。私たちもそれを後輩に引き継いでいきたい。
でも、伝統をプレッシャーに感じると緊張しちゃうので、それを自信に変えて、『私たちが各務野だぞ』って胸を張って大会に行きたいです」
2年ぶりの夏の舞台。たくさんの人から託された思いと、積み重ねた練習を糧に、岐阜各務野は勝ち続けることをあきらめない。
■インターハイの女子ソフトボールは28日に開幕し、4日間にわたって熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト 「インハイ.tv」 が全30競技の熱戦を無料で配信。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。
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(山田 智子 / Tomoko Yamada)