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一人だけの定時制バドミントン部 夜の体育館、高校4年生が先生と振るラケット【#青春のアザーカット】

学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。その上、コロナ禍で“できないこと”が増え、心に広がるのは行き場のないモヤモヤばかり。そんな気持ちを忘れさせてくれるのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。

体育館でシャトルを打つ宇都宮商業高校定時制4年・青山聖夜君【写真:南しずか】
体育館でシャトルを打つ宇都宮商業高校定時制4年・青山聖夜君【写真:南しずか】

新連載「#青春のアザーカット」カメラマン・南しずかが写真で切り取る学生たちの日常

 学校のこと、将来のこと、恋愛のこと……ただでさえ悩みが多い学生の毎日。その上、コロナ禍で“できないこと”が増え、心に広がるのは行き場のないモヤモヤばかり。そんな気持ちを忘れさせてくれるのは、スポーツや音楽・芸術・勉強など、自分の好きなことに熱中する時間だったりする。

 そんな学生たちの姿を、スポーツ・芸術など幅広い分野の第一線で活躍するプロのカメラマン・南しずかが切り取る「THE ANSWER」の新連載「#青春のアザーカット」がスタート。コロナ禍で試合や大会がなくなっても、一番大切なのは練習を積み重ねた、いつもと変わらない毎日。その何気ない日常の1頁(ページ)をフィルムに焼き付けます。(文=THE ANSWER編集部・佐藤 直子)

1頁目 栃木県立宇都宮商業高校定時制4年・青山聖夜君

島田先生と練習する青山君、時計の針は午後8時を差そうとしている【写真:南しずか】
島田先生と練習する青山君、時計の針は午後8時を差そうとしている【写真:南しずか】

「学校も部活があるから来ているようなもので……」

 青山くんは物腰の柔らかい口調で言うと、バツが悪そうに笑った。

 定時制のバドミントン部。部活が始まるのは、授業を終えた21時過ぎだ。昼間は働き、夕方に登校。給食を食べたら授業が始まる。給食室で働くおばあちゃんとは顔見知り。大好物の鶏ササミのチーズカツをリクエストすると、後日忘れずメニューに入れてくれる。

 去年は目標にしていた大会、県の定時制通信制総体に出られなかった。コロナ禍で限定された出場資格を得られず。悲しい気持ち。悔しい気持ち。言葉には表せない感情が押し寄せたが、グッと堪えて切り替えた。

「まだ3年生。僕には来年がある」

 登校すると毎日、体育館でラケットを振る。練習相手は顧問の島田先生。バドミントン初心者だった青山君に多彩なショットやフットワークの基礎を教え、成長のアドバイスをくれる。

 ほとんど毎日2人きり。グチも言わずに練習に付き合ってくれる。「メチャクチャ感謝しています」。先生との出会いは「自分にとってかけがえのない大きなもの。恩師です」と言葉に力を込めるが、その気持ちを直接伝えたことはない。「ちょっと恥ずかしくて……(笑)」

 たとえ1人でも地道な練習を重ね、課題を1つずつクリアしてきた。去年の大会に出られなかったことも、今では成長するために与えられた時間だと前向きに捉えている。出場を予定する2年ぶりの大会では「めっちゃ伸びたなって驚かせたいです」と意気込む。

 将来の目標は、介護福祉士になることだ。

 お年寄りの昔話に耳を傾けるのが大好き。何気ない会話から生活や人生に役立つ知恵を授けてもらう御礼に、記憶力が薄れたり、体に無理がきかなくなったりするお年寄りの手助けをしたい。「ありがとう」と見せてくれる笑顔に、心の奥がポッと温かくなる。

 今年は専門学校進学を目指す受験生。仕事、勉強、部活。やることはたくさんあるが、定時制のクラスメートはほとんどが仕事と学校を両立させている。

「世間は定時制のことを少し違った目で見ているんだろうと思うけど、みんなしっかりした人たち。社会について、人間性について、学校ではいろいろ勉強させてもらっています」

 やること満載の1日を締めくくるバドミントンの時間。今日もまた、夜の体育館でラケットを振る。

夢は介護福祉士の青山君、お年寄りの「ありがとう」に心が温かくなる【写真:南しずか】
夢は介護福祉士の青山君、お年寄りの「ありがとう」に心が温かくなる【写真:南しずか】

【出演者募集】
プロカメラマンの南しずかさんが、あなたの部活やクラブ活動に打ち込む姿を撮りにいきます。運動系でも文化系でも、また学校の部活でも学校外での活動でもかまいません。何かに熱中している高校生・大学生で、普段の活動の一コマを作品として残したいという方(個人または3人までのグループ)を募集します。自薦他薦は問いません。
下記より応募フォームにアクセスし、注意事項をご確認の上、ご応募ください。
皆様のご応募をお待ちしております。

■南しずか / Shizuka Minami

 1979年東京都生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科、International Center of Photography:フォトジャーナリズム及びドキュメンタリー写真1か年プログラムを卒業。2008年12月から米女子ゴルフツアーの取材を始め、主にプロスポーツイベントを撮影するフリーランスフォトグラファー。ゴルフ・渋野日向子の全英女子オープン制覇、笹生優花の全米女子オープン制覇、大リーグ・イチローの米通算3000安打達成の試合など撮影。米国で最も人気のあるスポーツ雑誌「Sports Illustrated」の撮影の実績もある。最近は「Sports Graphic Number Web」のゴルフコラムを執筆。横峯さくら自伝「さくら道」(文芸春秋)などの制作にも携わる。公式サイト:https://www.minamishizuka.com

南カメラマンがシャッターを切った「青山くんとバドミントン」

「撮影協力:Pictures Studio赤坂」

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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