日本中を驚かせた金メダル、原点にあった女子選手への敗北と父の言葉
胸に突き刺さった父の言葉
「相手の女子選手は小学校の時から強くて評判だったんです……という風に自分に言い聞かせないとショックは振り払えませんでしたね」
野村さんは苦笑いを浮かべながら当時をそう振り返る。
中学時代は体が大きくならなかったことも影響し、その後も目立った成績を残すことはできなかった。その後、全国有数の柔道強豪校・天理高に進学することになったが、同校で指導に当たっていた父・基次さんからも胸に突き刺さるような言葉をかけられた。
「無理して柔道せんでいいぞ」――。
3つ年上の兄が同じ天理高に進学した際は「人の3倍努力する覚悟をしろ。その覚悟がなければ柔道部に入るな」と声をかけられていた。言葉に込められた期待度の差にショックを受けた。
「厳しい言葉は期待の裏返しだと思います。一流の指導者から見ても当時の自分は弱かった。それでも『なんで俺には期待してくれへんの?』と、ものすごく寂しかったし、悔しかったですね」
そこで柔道を諦めて普通の学校生活を送ることも可能だったが、野村さんはそうはしなかった。心の奥底に「反骨心」が芽生えたからだ。