日本中を驚かせた金メダル、原点にあった女子選手への敗北と父の言葉
日本中を驚かせた金メダル、原点は「反骨心」
「“オヤジ見とけよ、強くなって見返してやる”の一心でしたね。私にとって柔道における大きな原動力は、反骨心になります。その言葉で自分自身も名門高校で柔道を続ける不安な気持ちにケリをつけられましたね」
逆にその悔しさを糧にして柔道に打ち込んだ野村さんは高校時代にインターハイに出場するほどの選手にまで成長。大学時代にも急成長を遂げ、4年生時に臨んだアトランタ五輪で日本中を驚かせる金メダルを獲得した。
そんな野村さんは自分を特別な人間ではないと語る。悔しさをバネに無我夢中で努力し続けた結果がオリンピック出場であり、金メダル獲得だった。だからこそ、後進を指導する際も努力の大切さを語り続けている。今年8月末に大塚製薬が取り組む「ポカリスエット エールと、ともに。 ブカツ応援キャラバン」の一環で神奈川県の桐蔭学園高等学校を訪れた際も、全校生徒対象の講演会や柔道部への指導で熱弁をふるった。
「意味のある努力、先に続く努力をしてほしい。その分かりやすい例が私だと思うんですよ。中学校で女子選手に負けて、高校で父親に『柔道、やめていいぞ』と言われたような存在なので。私は特別な存在ではない。だからこそ目の前のことに全力で取り組んでほしいと願っています」
いわば“叩き上げ”のキャリアを歩んだからこそ、その言葉にも重みがある。
【了】
茂野聡士●文 text by Satoshi Shigeno