ロングスローが選手権で輝き放つ理由は? ”季節の恩恵“が生む起死回生の切り札
形勢逆転の希望を乗せた飛び道具「悪い流れを断ち切るには打ってつけのプレー」
近年、選手権では「ロングスロー」が1つのトレンドとなっている。一昨年は青森山田のDF原山海里が驚異的なロングスローで数多くの得点を演出した。昨年は、その原山を引き継ぐ形で同校MF郷家友太が大会合計3得点を生み出した。
とりわけ選手権でロングスローに脚光が浴びるのには、季節も少なからず影響をもたらしているようだ。
「手で投げるというのは、足で蹴る以上に柔らかい球と速い球の使い分けが繊細に行える。それに加え、1月は特に強風の恩恵も受けられることがある。試合で悪い流れを断ち切るには、打ってつけのプレーなんですよ。今日は風がなかったけど、先日の試合は強かったので、その効果が出ました」
この日、駒沢陸上競技場は無風に近い環境下にあった。その一方で、3日に行われた3回戦の帝京大可児(岐阜)戦では同会場に強風が吹き荒れていたため、風に流れるロングスローが相手守備陣に多大な混乱を巻き起こしていた。
スローインはオフサイドが適用されない分、ゴールラインのギリギリの位置に構えることも許される。その上でロングスローという軌道や速度が読めない飛び道具が放り込まれ、なおかつ強風によりボールが不規則な動きをするともなれば、守る側からすれば脅威そのものであり、対処しきれず失点という事態も出てくる。
対してロングスローの武器を持つチームからすれば、どんなに劣勢を強いられても、その飛び道具一発で形勢逆転が狙えるという希望を持ってピッチに立ち続けることができる。
6日の準決勝で対戦する前橋育英(群馬)の山田耕介監督は「あのロングスローは気をつけないとまずいね」と警戒心を強めており、白尾監督は「前橋育英は最終ラインにプロ入りが内定している選手もいるが、そういう難敵への切り札にもなり得る」と大会屈指の最終ラインに対しての打開策として期待を寄せている。
流通経済大柏(千葉)と並び優勝候補筆頭とされる前橋育英に対し、起死回生のロングスローはどこまで通用するのか、注目のゲームとなりそうだ。
(THE ANSWER編集部)