エースがPKを外すということ 清水桜が丘が敗退を笑顔で受け入れられた理由
「今度は自分たちが『大丈夫だよ』迎え入れる番」
「外したのが海斗だったから。怪我で苦しい時間を過ごしていたのはみんなわかっていたし、今までずっと誰よりも練習して努力する姿を、みんな見てきた。みんな、海斗を尊敬している。だから、あいつが外してしまうなら、それはもう仕方のないこと。全員が一番素直に受け止められる終わり方だったと思います」
この日同点弾を決めたMF松下祐也(3年)は、PK戦による敗退を清々しい表情でそう振り返った。「悔しいのは悔しい。けど、そんな感情より海斗に対して『ありがとう』の気持ちの方がずっと強いから」。そう語った松下は、自身の失敗を引き合いに出した。
「僕も実は今年のインターハイ予選でPKを外してしまい、負けてしまったんです。その時、海斗は僕を笑顔で迎え入れてくれて、『PKなんて外しても大丈夫だ』と言ってくれた。本当に頼れる存在。だから、今度は自分たちがそんなキャプテンを『大丈夫だよ』迎え入れる番です」
白井本人は試合後、「怪我で後半からしか出られず、それでPKも外してしまって……、チームに貢献できなかった」と肩を落としていたが、これまで多くの代表選手を育て上げてきた大滝雅良監督も「エースが怪我をして、エースがPKを外した。ということは、これが我々のベストゲームだったということ」と話し、主将としてチームを率いた白井に絶大な信頼感を示した。
白井がいたからここまで来ることができた――。それは応援席だけの声ではない。チームメート、監督も同じように抱いている想いだった。だからこそ、PKを外した失意のエースを、彼らは笑顔で迎え入れたのだった。
(THE ANSWER編集部)