「1秒も乗れなかった」ところからのスタート カヌー北本忍が高校生へ伝えたエール
「メジャーとは言えない」カヌーを普及させるには…「情熱をもって挑戦して」
そして、最も熱を帯びたのは「将来」についての言葉だった。「地元でカヌーをしている人が少ない。高校も廃部が決まっている。自分が引退して、残る部員は1人になります。どうすればカヌー人口が増えますか?」。こんな質問が岡山県の高校の3年生部員から挙がった。
わずかに逡巡した後に「カヌーはまだまだメジャーとはいえない。普及は難しいのはあります」と言葉を選んだうえで、逆に問いかけた。「なぜカヌーを始めたんですか?」と。
「兄弟の影響で、楽しそうだったから始めました」と答えた男子部員に対して、さらにこう続けた。
「カヌーを魅力的に感じたからですよね。そういうふうにたくさんの方に思ってもらうことが大切。カヌーって乗ってみたら楽しいじゃないですか。普段は感じられない水上の世界を感じられる。そういう機会を作ってみたり、アピールすることも大切です」
そして自らがカヌーの道に進んだきっかけとなるエピソードを明かした。
「私が大学1年の時は、カヌー部に新入生も少なくて、最初は2人だけでした。同級生が少ないから、私のクラスのカヌー部に入った子が、(クラスの)ほとんどの子に声をかけていた。必死で『楽しいよ』って魅力を話していて、その子のあだ名が『カヌー』になっていたくらい(笑)。
それくらいその子はカヌーの事が大好きで、情熱にあふれていて、でもそのおかげで私の学年は20人以上カヌー部に入ることになりました。その子の魅力に誘われてカヌーに入ったんです。情熱があれば人を動かすことは可能です。今、廃部の危機かもしれないけど、広めたいという情熱をもって挑戦してみて欲しいです」
高校生アスリートにとって大きな逆風が吹いた2020年。それでもカヌーを愛する情熱があれば、前を向ける。現在はママとなったオリンピアンの心からのメッセージは、若者たちの胸に響いたはずだ。
■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。授業は「インハイ.tv」で配信され、誰でも視聴できる。
(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)