「私は1日33個のルーティンを作った」 杉山愛が高校生に伝えたエールの真意
怪我が少なかった杉山さん、予防に大切なことは「体との会話」
自身の体験を披露し、優しく語りかけた杉山さん。オンライン上で積極的に呼びかけ、高校生とコミュニケーションも図った。
「私の学校は、部活も勉強も頑張ろうと掲げてやっている。でも、全部をやろうと思っても苦手なことを後回しにしてしまって、なかなかことがある。お仕事と主婦業を両立している杉山さんの最後まで頑張る源は何ですか?」という質問には「プライオリティー(優先順位)付け」の大切さを説いた。
「バランスも大事だけど、『今はこれを頑張ろう』というプライオリティー付けもすごく大事。高校を選んだ時も『勉強が大変な中学だったけど、高校はもっとテニスができる環境を整えよう』と決めてたけど、プロを選んだ時も『勉強はいつでもできる、テニスは今しかできない』とその時は思ったから。だから、その時その時のプライオリティー付けはいつの時代も大事。これは学生の時だけじゃなく、きっと社会人に出てからも大切になってくると思います」
さらに、試合に向かうメンタルの作り方の話が及んだ。「試合中や試合前に緊張してしまい、体が上手く動かないことある」という悩みには「私も何度、緊張にやられたか」と共感。様々な本を読んで対策を研究し、自身に一番合っていたのは「呼吸法」と「イメージ」。実践したのは「100歳だからこそ、伝えたいこと」(塩谷信男著)で紹介していた「正心調息法」という呼吸法だ。
「簡単にいうと、丹田を意識しながら腹式呼吸をして、深い呼吸ができたところに自分がしたいリアルなプレーをイメージしていくというもの。それをやってみたら、すごく自分に合っていた。みんなにもそれぞれ合う方法があるから、それを見つけてほしい。私は相手よりも自分の緊張に勝てず、力を出せなかった苦い経験がたくさんある。特に、センターコートのようなお客さんがたくさん入る会場が苦手で……。でも、自分に合った方法を見つけたことで、緊張に打ち勝つことができたと思います」
「現役時代、あまり怪我をしなかった」という杉山さんに「私たちもできるだけ故障しないようにアップ、ダウンも気を付けているけど、チームには故障する人もいます。練習のアップとダウンで気を付けていたことは何ですか?」との質問も挙がった。まずはウォーミングアップにおけるストレッチの必要性を説いた上で、杉山さんは「体との会話の重要性」を伝えた。
「毎日のルーティンなので、例えば『昨日より体に硬さがあるな』『ここ、疲れているな』と体の声を聞いてあげることもアップには必要。なんとなく動かして、汗をかいて、伸ばして……だけじゃなく『どこか疲れてない?』と自分の体に声をかけてあげるように、会話しながらストレッチすること。あとはプロの世界でも大事だけど、どれだけリミットのギリギリまで追い込めるか。追い込むことは必要だけど、これ以上やったら怪我をするラインを知ること。この見極めも自分の体との会話から生まれます」
そして、参加者が目を丸くしたのは、杉山さんの現役時代のルーティンが明かされた時。こんな質問が飛んだ場面だった。