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「コロナ禍の部活」で大切にすべきこと スポーツ心理学者・荒木香織氏が指導者にエール

コロナ禍の部活指導者へ「生徒が好きなはずのスポーツを楽しめる環境を作って」

 続いて質問コーナーでは現役の指導者から積極的に質問が飛んだ。

 12人の部員がいるものの、実力差が大きく、それぞれの目標も異なるという陸上部の教員からはこんな切実な悩みが上がった。

「生徒に『続ける力』が低い学校で、全体で3年生までに50%くらいは部活を辞めてしまう。6月から学校が始まったが、アンケートを取ると『部活を辞めたい』『学校に行きたくない』という悩みを抱えている生徒が多くいる。部活が来週から始まるが、部員のモチベーションが低い場合、どういう声かけをしていくべきか」

 これに対し、荒木氏はコミュニケーション機会の設定を助言した。

「新型コロナウイルスの影響は大人も子供も受けている。『辞めたい』という理由が休みの間に何か自分がやりたいことが見つかったという前向きな理由だったら気にする必要はないと思います。なので、まずは理由を聞く必要はあります。その中で『なんだか分からないけど、やる気がない』という無気力感を持つ子もいます。それは経験したことのない状況で、ずっとテレビをつけている家庭なら、この数か月はコロナばかり情報が入ってきた。部活どころか、生きていく気力を持てない子もいます。

 なので、この期間をどう過ごしてきたかを聞いてあげることが大切だと思います。例えば、練習状況はどうだったのか。家で練習している子もいれば、していない子もいる。どんな風に過ごしてきたのか。先生が話を聞いてあげるだけで、気持ちが楽になる子も出てくると思います。12人であれば、1人15分程度の面談はできると思うので、あまり辞める、辞めないという雰囲気ではなく、部活再開に向け『来週からできそう?』『どんな練習したい?』などと聞いてあげる機会を持ってほしいと思います」

 対話の重要性を説いた荒木氏は、他にもコロナによる影響に限らず、「生徒が試合になると、能力の6割くらいしか出せない」「自己表現が苦手な子供が多く、チャレンジに対して消極的」「大会で緊張してしまう選手にはどんな声かけをすべきか」などの一般的な指導にまつわる質問、悩みにまで一つ一つに向き合いながらアドバイス。濃密な1時間の授業はあっという間に過ぎた。

 授業を終えた荒木氏は、コロナによる影響を受けている全国の指導者へ向け、「今、練習や試合ができなくなった中で、部活を通じてどんなことが養えるのか、どんなことが先生と部員でできるのかを明確にしてあげることは大切です」と説いた。「試合を目標にするのは難しくない。試合がなくても『何月までにこれを目標に部活をやっていきましょう』『部活をやっているからこそできる経験があるよ』と伝えてあげること。好きなはずのスポーツを楽しめる環境を作ってあげてほしい」とエールを送った。

■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。今後はハンドボール・宮崎大輔、元テニス・杉山愛さん、元バレーボール・山本隆弘さん、元体操・塚原直也さんらも登場する。授業は「インハイ.tv」で全国生配信され、誰でも視聴できる。

(THE ANSWER編集部)

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