元バレー女子代表監督・眞鍋氏の哲学 世界に勝つための鍵は「非常識を常識に」
ロンドン五輪メンバーに左指を骨折した司令塔の竹下を選出する決断
眞鍋氏の「非常識」はもうひとつ、ロンドン五輪に集約されている。
世界最小セッターと言われた身長159センチの竹下を、4年に一度の祭典に送り出す12人に選出。彼女はチームの司令塔だけに、常識的に考えればそれは至極真っ当な決断だが、実はセッターにとって命とも言うべき指を骨折していたのだ。
「ロンドン五輪の前、スイスで2週間合宿をしていました。忘れもしない7月20日、オリンピックの1週間前です。先ほどのレシーブ練習をしていた時、その1球が竹下の前でワンバウンドして左手の人差し指を直撃しました。おそらく、激痛が走ったと思います。竹下はすぐにコート脇に外れましたが、彼女が3年半でコートから出たのはこの時だけです」
5年が経過した今でもすぐさま日付が浮かんでくるほど、その日のことは鮮明に覚えていると眞鍋氏は語る。「私(病院には)行かないです」とレントゲン撮影を拒む竹下を強制的に病院に赴かせ、ホテルに戻ってきて受け取った診断結果に愕然としたという。
「左手の人差し指の第一関節骨折です。当然、竹下がメインのチームで、しかもオリンピックの1週間前。心の中で『終わった』と思いました。ただ一応、竹下に『痛いのか?』と尋ねると、『痛くありません』と言うんです。『その代わり、3日間だけ休みをください』と」