サニブラウン、大一番で故障のなぜ 専門家が指摘する「体力」ではない「技術力」
「世界のファイナリスト」が得た収穫「100mの9秒台、200メートルmの19秒台は確実」
「技術的に言えば、100メートルの準決勝で修正を試みたようにスタートにあるかなと思います」と話しながら、弱点を補って有り余る伸びしろに期待する。
「彼はまだ18歳で大学1年の年代に当たる。男子の短距離選手の場合、学生の間の1年間は技術的にはもちろん、肉体的に成長する幅が大きい。その分、記録もグンと上がる。サニブラウン選手自身、高校3年から体つきも走りも変化しているし、タイムは伸びていく。単純に体が成長するということだけでも期待は大きいです」
秋本氏は「世界のファイナリスト」になった経験も、成長にプラスアルファを与える要素になるとみている。
「決勝は全然違う舞台。人がどんどん減っていく中で、8人しかいないレース前の招集所の空気を体験できたことも違うと思います。まして、彼は前半100メートルでコーナーを出るまでトップレベルにいた。その世界を見たことは確実に今後に生きる。まして、それを18歳で体験できたんですから」
こう話した上で「足の軌道や手と足の使い方など、技術力を高めていけばフォームもガラッと替わる。楽に走ってタイムが出せるようになれば、世界で戦える選手になります」と太鼓判を押した。
最後に、伊藤氏も怪物の将来について、このように評した。
「何を見て何を思うかは現場で彼が感じること。そこで決勝まで行けた経験はこちらが想像するより大きいと思うし、モチベーションも上がると思う。目標にしている世界記録に向け、これからいろんな手段を取っていくのではないか。100メートルの9秒台、200メートルの19秒台は時間の問題。日本人は世界より3~4歳早く、20代前半にベストタイムが出やすいと言われていますが、彼はそんな常識も打破してどんどんタイムを伸ばし、世界で戦える選手になれるという期待を持っています」
確かなポテンシャルを世界に見せつけたサニブラウン・ハキーム。18歳に待ち受ける将来は、我々が想像もできないくらい、輝かしいものが待っているかもしれない。
◇伊藤 友広(いとう・ともひろ)
高校時代に国体少年男子A400m優勝。アジアジュニア選手権の日本代表に選出され、400m5位、4×400mリレーではアンカーを務めて優勝。国体成年男子400m優勝。アテネ五輪では4×400mに出場。第3走者として日本過去最高順位の4位入賞に貢献。国際陸上競技連盟公認指導者資格(キッズ・ユース対象)を取得。現在は秋本真吾氏らと「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
◇秋本 真吾(あきもと・しんご)
2012年まで400mハードルの陸上選手として活躍。五輪強化指定選手選出。200mハードルアジア最高記録、日本最高記録、学生最高記録保持者。2013年からスプリントコーチとしてプロ野球球団、Jリーグクラブ、アメフト、ラグビーなど多くのスポーツ選手に走り方の指導を展開。地元、福島・大熊町のため被災地支援団体「ARIGATO OKUMA」を立ち上げ、大熊町の子供たちへのスポーツ支援、キャリア支援を行う。2015年にNIKE RUNNING EXPERT / NIKE RUNNING COACHに就任。現在は伊藤友広氏らと「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer