ピッチレベルで見守った元日本代表FW佐藤寿人氏が「THE ANSWER」で解説

　サッカー・アジアカップカタール大会は24日、グループリーグ第3戦で世界ランク17位の日本が同146位のインドネシアに3-1で快勝し、グループ2位で決勝トーナメント進出を決めた。「THE ANSWER」は中継局のレポーターとして現地取材し、この試合をピッチレベルから見守った元日本代表FW佐藤寿人氏の解説を掲載する。インドネシア戦とともによもやの2位通過となったグループリーグ3試合を総括しながら、ノックアウトステージの決勝トーナメントを展望した。（取材・構成＝藤井 雅彦）

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　早い時間帯に先制点が生まれたことも追い風になりましたが、インドネシア戦の日本は前へアクションを起こす選手が過去2試合と比べて格段に多かったように感じました。イラク戦から8人をチェンジして臨んだ影響でしょうか。「自分がやってやる」という気持ちを前面に押し出した選手も多く、先発変更の効果は間違いなく出ていたと思います。

　2列目の堂安律選手と久保建英選手が頻繁にポジションチェンジを繰り返しながらボールを受ける位置を取り、相手の守備ブロックを動かす役割を担っていました。2人はボールキープ力だけでなく、パスを出したあとも足を止めない。堂安選手がアシストした場面でもその特徴がよく出ていました。

　彼らの動きに呼応するようにボランチ起用された旗手怜央選手や右サイドバックの毎熊晟矢選手が積極的なランニングで高いポジションへ進出する。スペースを有効活用し、分厚い攻撃を実現させていきました。そうやって自分たちからアクションを起こすことで、躍動感あるプレーが増えました。

　前半、久保選手のパスから毎熊選手が相手ディフェンスラインの背後を取り、中村敬斗選手のシュートがポストに当たったシーンは素晴らしい崩しでした。パフォーマンス内容を考えれば、もっと点が入ってもおかしくない前半45分だったと言えるでしょう。1-0ではインドネシアに粘るチャンスを与えてしまいますし、そこは反省材料でもあります。ただ、インドネシアのシュートの本数が前半は0だったことから、後半に追加点を取って日本が勝つ展開はある程度見えていたと思います。

　2列目以降の選手がプレーしやすい状況を作ったのは、1トップに入った上田綺世選手でした。自分はゴール裏から試合を見ていましたが、彼は常にボールに対して対角のポジションを取ってボールホルダーの選択肢になっていました。パスが出てこなくても常に認知されていたと思いますし、インドネシアの3バックの脇を狙っていたので、相手としては終始やりづらかったはずです。

　PK獲得の場面は、相手ゴールに背を向けてボールを収めるのが一番ラクなプレーです。ですが上田選手はさらに上のプレーを実践しました。守備者の寄せ方を見て判断を変え、前を向くために身体を反転させた。それによってファウルを誘い、先制点が生まれました。PKの場面も、最初はあえて1人だけ離れた位置で集中力を高めていたように、時間の使い方や空気の作り方も良かった。

　ここまでに先発した細谷真大選手や浅野拓磨選手もボールを収めることのできる選手ですが、得点を奪うというタスクに最も特化できるのは上田選手かもしれません。インドネシア戦で残した結果と見せたプレーの両方に“らしさ”が見えました。そして、彼の存在によって2列目の選手がアクションを起こせたことが攻撃の活性化につながったという点でも、果たした役割はとても大きかったと思います。