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「痛いハードル」にぶつけた110m障害日本勢 あまり知らない陸上ハードル種目の奥深さ

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。

男子110メートル障害、準決勝に出場した泉谷駿介【写真:AP】
男子110メートル障害、準決勝に出場した泉谷駿介【写真:AP】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#62

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。

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 第4回は「ハードル種目の奥深さ」。男子110メートル障害予選で泉谷駿介(順大)と金井大旺(ミズノ)が日本勢57年ぶりに準決勝進出し、にわかに注目を浴びたハードル種目。4日の準決勝は泉谷が1、2台目で引っかけ、わずか0秒03差で決勝進出ならず、金井もバランスを崩して8台目の前に転倒した。「走る」に「跳ぶ」が加わる奥深い種目の面白さを一般のファン向けに解説する。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 男子110メートル障害。日本勢の泉谷と金井は、この種目で日本勢57年ぶりの準決勝の舞台に立った。その裏にあったのは、110メートルハードルで高速化が進んでいたこと。1台目までの歩数に理由があった。

「日本陸連のデータに基づいて『3台目までをいかに速くするか』を追い求めてきたこと。そのためにスタートから1台目までの歩数を8歩から7歩に減らしました。それにより1台目の通過が速くなり、2、3台目の通過も速くなる。これで7歩がトレンド化しましたが、むりやり7歩にしたからといって速くなるわけではないのが、陸上の難しいところ。そもそもスピードは『ピッチ×ストライド』で成り立つという前提があります。

 ただ、ストライドを目指して凄く大股で走ってもピッチが伴わなければ理論的に速くならない。今の日本人選手はスピードを速くしながら7歩で行ける点が素晴らしい。支えているのは、何より純粋な足の速さ。僕らの時代の110メートルハードルで凄く足が速い選手はなかなかいなかった。でも、今は100メートルも10秒3台を出して日本選手権に出られるんじゃないかと思うくらい。明らかな進化が裏側にあります」(秋本)

 ハードルといえば、足をひっかけてタイムを落としてしまい、観る側もハラハラする種目。どんな苦労があるのか。

「これは選手によってさまざまですが、先に出す方の『リード足』をハードルに引っかけてしまうパターンは低く跳ぼうと攻めすぎてしまう。でも、多くは後から付いてくる方の『抜き足』です。足をハードルから抜いていく時、膝あるいはつま先をぶつける。よく転倒したり、減速したりというシーンを見ますが、こういう風に圧倒的なロスが生まれるのが抜き足のパターン。なので、凄くダメージが大きくなると考えています。

 昔、アレン・ジョンソン(米国)という『ハードルなぎ倒し男』と呼ばれた選手がいました。彼はなぜ倒しまくっても世界記録が出たかというと、良い倒し方をしていたから。太ももの裏でハードルを乗り越えるように倒す。太ももの裏でハードルに乗っかって倒すイメージ。足の裏でハードルを当てるなど、抜いてくる足でぶつけてしまうとロスは大きいですが、これは大幅な減速になりにくい。ただ、単純な足の速さはもちろんですが、世界陸上の4×400メートルリレーも走ったくらいの走力もあります」(秋本)

「足の速さ」という前提がありながらも、ハードルはぶつけ方で減速するかしないかが決まってくるという。

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