日本の大砲・村上宗隆を斬った縦スラ メキシコ前茨城右腕の勝負球は「ザ・ジャイロ」
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は投手の“球”を独自の「ミカタ」で解説する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#46
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。多くのプロ野球選手も加入するパフォーマンスオンラインサロン「NEOREBASE」主宰、ピッチングストラテジストの内田聖人氏は投手の“球”を独自の「ミカタ」で解説する。
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日本の侍ジャパンは31日の第2戦のメキシコ戦に7-4で勝利。2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。敗れたメキシコだったが、光ったのは4番手で登板したセサル・バルガス投手。今季BCリーグ茨城に所属した29歳右腕は6回の1イニングを12球で完璧に抑えた。特に、先頭の大砲・村上宗隆内野手(ヤクルト)をワンバウンドする縦スライダーで空振り三振。際立った1球を分析した。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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敗れたメキシコですが、日本に最も良いピッチングをしたのが、バルガス投手ではないでしょうか。危なげない投球で1イニングを抑えました。
最も印象的だったのは、村上選手から空振り三振を取ったシーン。カウント2-2から落差の大きい縦スライダーでバットに空を切らせました。この球種を中心に、この打席を振り返ってみたいと思います。
まず、縦スライダーと言われる球種には2つのタイプがあると考えます。一つはしっかりとトップスピンをかけ、速いカーブのような軌道。このトップスピン系のスライダーはオリックスで活躍している山岡泰輔投手が武器にしています。
もう一つはジャイロ系のスライダー。多くの投手がこのタイプに分類されますが、バルガス投手も当てはまります。ただ、バルガス投手はリリースポイントが高く、「ザ・ジャイロ」というべきジャイロスピンをかけた特徴的な縦スライダーです。
ジャイロ回転は基本的に変化しない。ストレートはホップしながらシュートする軌道ですが、ジャイロになるとストレートに対して落ちるな軌道を描きます。バルガス投手は少しトップスピンもかけているので、指にかかった時は本当によく落ちる印象です。
この日はコントロールが良かったですが、村上選手との打席でもそれが生きました。ストレートとツーシームで追い込みましたが、ボール2球を含め、4球すべて低めにいっている。その制球は素晴らしかった。
低めを続けて目付けしたところに、変化量の大きい縦スライダー。打者からすると、ちょっと甘いと思う高さだったと思います。そこからしっかりと落とした。BCリーグでプレーしているとはいえ、どこまで情報があるか分からず、実際の変化量も未知数の状況。
ストレート系で追い込んだ後に「甘い」と思う高さに来たので、あの1球に関していえば良い打者でも見逃す以外に対応はできなかったのではないでしょうか。初見では難しく、コントロールありきの素晴らしい抑え方でした。
最速155キロを誇り、茨城では毎試合152~3キロを記録。BCリーグでは圧倒していたと聞きます。もともとメジャー経験もある投手ですが、こういうピッチングを安定してできれば、NPBで見る時が来てもおかしくありません。