敗退なでしこはすべて出し切って負けたのか 永里亜紗乃「組織の責任はあまりに重い」
後半の戦いぶりに疑問「世界との差は開いていくばかり」
それよりも、後半に入ってからの戦いぶりに疑問を抱きました。
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印象的だったのは、後半の立ち上がりに岩渕真奈選手が高い位置からプレスをかけたシーンです。これに対してスウェーデンは手を焼いていたように見えましたし、いい守備だったと思います。ただ、チーム全体で連動したプレスではなく、あくまでも単独でのプレスで終わっていました。これが戦術的な狙いのある守備の場合、全体が連動しなければいけません。中盤の選手はボールを奪うために岩渕選手に続き、最終ラインは全体をコンパクトにするためにラインを上げるはず。そういった動きは見られず、これは監督の指示ではなく選手個人の判断に任せたプレーでした。
さらに、勝ち越しを許してからの選手交代にも首を傾げざるをえません。これまで右サイドバックで出場していた北村菜々美選手が右サイドハーフで投入され、本人も困っていたように見えました。交代のタイミングが遅く、意図が伝わらなければ、選手たちは混乱して流れが悪くなってしまう。ビハインドを追いかける試合終盤にギアが上がらなかった原因は明白です。
本来は大会前にさまざまなシチュエーションを想定してトライすべきなのですが、準備不足を露呈してしまいました。私が現役選手だった当時、佐々木則夫監督は負けている展開では、前線を3トップにするシステム変更で選手たちにメッセージを伝え、同点の展開やリードしている状況を見据えたゲームプランもしっかり練っていました。
負けている展開で選手交代したのに変化があまりにも乏しく、ずっと同じテンションで戦っているのは大きな問題です。チリ戦で先発出場していた菅澤優衣香選手がベンチメンバーに入っていないことも不思議で、これはチーム全体のモチベーションにも影響を及ぼします。
さらに言うと、今大会を戦う22人には経験に基づいて立ち回れる選手が少なかった印象もあります。チームの勝利のために戦うことを実行できた選手が何人いたのか。「世代交代」という言葉は響きが良いですし、未来を見据えて若い選手に経験を積ませることも重要です。でも自国開催の東京五輪は結果を求められる大会で、そもそも日本代表というフィールドは常に結果で判断される場所のはずです。
これでは世界との差が縮まるどころか、開いていくばかりになってしまいます。個々を切り取れば成長している部分もあるかもしれませんが、それがチーム力に還元されていないのでは意味がありません。差を埋めるための策が最後まで見えず、相手の得意パターンで失点を重ねたのはとても残念でした。