突破のなでしこに今、敢えて問う覚悟 永里亜紗乃「日の丸背負う意味、理解しているか」
女子サッカーの未来を背負っていることを忘れないで
試合後のインタビューで、岩渕真奈選手が目に涙を浮かべていました。その涙がすべてだと思います。
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グループリーグ敗退の危機が迫り、とても大きなプレッシャーを感じていたのでしょう。もしかしたら一人で重いものを背負いすぎている状況なのかもしれません。10代の頃から日本代表の一員として戦い、世界一を経験しているからこそ責任の大きさも理解できるのだと思います。
彼女のように日本代表として、日の丸を背負って戦う意味を理解している選手がどれだけいるのか。これは出場している選手たちだけの大会ではありません。歴史を紡いできた先人たちからのバトンやこの舞台に立ちたくても立てなかった選手たちの思いを受け取り、女子サッカーに携わる関係者全員の未来を懸けた戦いなのです。
この東京五輪を境に、女子サッカーがどんな道に進むのか。多くの国民に視線を向けられ、注目され、同時に期待をされているのです。勝ち負けは大切な要素ですが、そこに至る姿勢が何かを訴えかけるものであってほしい。他競技の奮闘を目の当たりにしているからこそ、女子サッカーの淡白さに物足りなさを覚えてしまいます。
2011年のW杯で優勝し、なでしこジャパンは一躍、日本中に知られる存在になりました。でも、このままでは徐々にその記憶も薄れ、一時期のブームとして過去のものになってしまうでしょう。選手たちには自分自身の未来だけでなく、女子サッカーの未来を背負っていることを忘れないでほしい。
私はなでしこジャパンの一員として、それほど多くのピッチに立ってはいません。でも、歴史に名を刻んできた先輩たちから日本代表として戦う誇りや責任を教えてもらいました。自分が試合に出場できない悔しさもありましたが、そんな私の思いも汲み取って全力でプレーしてくれた先輩たちの姿を間近で見てきました。
2年前のW杯はベスト16で敗退しました。本気でメダルを目指すのであれば、この壁を突き破らなければいけません。現段階で金メダルを目指すというのはおこがましい。準々決勝で対戦するスウェーデンは優勝候補の一角で今大会絶好調です。グループリーグの3戦目は主力選手を温存していたのでコンディションの面でも相手のほうが有利でしょう。
10回対戦して、勝てるのは1回か2回かもしれません。だけどそういった劣勢や逆風を跳ね返してこそ、なでしこジャパンです。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)