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阿部兄妹が同日金メダル達成できた理由 北田典子「一二三に『五輪のために作った技』」

一二三に「五輪のために作ってきた技」、後半の戦いぶりに見えた成長の跡

 一方、一二三選手は、今日は「袖釣り大外」のような技でずっと勝ち上がってきました。最後もそうですし、初戦の2回戦から「五輪のために作ってきた技だな」という印象がありましたね。袖釣り込み腰を仕掛けている風で大外刈り。袖釣りにもいける、大外にもいける。一二三選手は腰の強さがメインで作ってきている選手。今まで袖釣りから小内刈りとか、そういうのはあったと思うんですけど、袖釣りから大外刈りは私が見ていた中ではなかったですね。

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 初戦から厳しい相手だったので、使っていったのだと思います。だからといって、相手は分かっていても防げない。それぐらい作り上げてきた技だなっていう感じがしました。柔道はだまし合い。私自身もそういう技を持っていたし、途中で切り替える技も持っていました。こういう大きな舞台ではそういう技を持っている人が強いですね。

 日本人だったら対応していたと思います。リオ五輪のとき、90キロ級の中国選手が同じような技をやっていました。ノーマークに近い存在で、ほかの選手は対応できずに勝ち上がってきたわけです。でも、日本のベイカー茉秋選手はきちっと対応して勝ちました。そこが日本のすごいところ。日本には「GOJIRA」という分析ソフトがありますけど、それを通じて初めて見る技がどういう技か分析して担当コーチが組み手の対応をしたのです。

 一二三選手の決勝で怖かったのが、後半です。下がるような場面がありました。代表争いをした丸山城志郎選手との試合のときもそうですが、先にポイントを取ると、ああやって無意識だと思うのですが、距離を取ろうとしてしまう。今までなら、それを(ポイントを)取られたけど、そこをしのぎきれたっていうのがさらに強くなった証ではないでしょうか。ちゃんと相手が見えていた。丸山戦の経験もあったと思います。精神的に、あれだけ戦って自分が代表に選ばれた。1人じゃなくて、丸山選手の思いも背負って戦っているなってすごく感じましたね。ライバルがいたから、ここまで成長できたというのも彼の大きな支えになっていると思います。

 阿部兄妹はこの試合で柔道の素晴らしさを見せてくれました。何よりも素晴らしいのは、人に対してリスペクトの気持ちを持っていることです。詩選手のインタビューにあったように「金メダリストにふさわしい人間に成長していきたい」ということを言っていますから、それをさらに示していってくれると思います。金メダルを取ることでもう1枚、大きな扉が開きます。そこから見える景色はまた違うので、そこで学んだことを柔道界や、日本の子どもたちに伝えてくれればありがたいなと思います。

(日本大学柔道部女子監督、全日本柔道連盟常務理事)

(THE ANSWER編集部)

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