敗退危機なでしこは「勝てる試合に負けた」 永里亜紗乃「事故ではなく自滅に近い失点」
敗戦につながった失点は3つのミスが原因
失点は自分たちのミスが3つ重なっていました。
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得点したホワイト選手を最初にマークしていたのは熊谷紗希選手。でもクロスが上がってきた瞬間、GKの山下杏也加選手が「自分がボールを処理する」という主張で声を出したので任せてしまった。結果論ですが、GKが出るべきボールではなかった。ゴールマウスを飛び出したからにはボールに触るのが鉄則。最後に、ああいった形でGKが出た時には誰かがゴールカバーに入らなければいけないのに、チームとしてそれを怠ってしまいました。
相手が弱ければミスをしても失点にならずに済むことも多いですが、一瞬の隙を見逃さないのが世界です。反対に言えば、誰かがミスをしても誰かがカバーすれば、あの失点は防げました。当事者である選手たちはそれぞれのミスを自覚しているはずですし、事故ではなく自滅に近い失点でした。
英国は強いチームですが、コンディションや出来を考えれば勝てない相手ではなかったと思います。自分たちがやるべきこと、やらなければいけないことを突き詰めれば勝ち点3のゲームにできたはず。でも現実は、勝てる試合が勝てそうにない試合になってしまい、負けてしまった。世界大会で上位を狙うのならば、勝てる試合をしっかり勝たなければいけません。
痛い敗戦になってしまいましたが、下を向いている暇はありません。この大会はグループ3位になった3チームのうち上位2チームが決勝トーナメントに進めるレギュレーションです。だから日本は第3戦のチリ戦に勝利して勝ち点を「4」にまで伸ばせば決勝トーナメント進出が確定で、もし引き分けて勝ち点2でも他グループの結果次第では次のラウンドに進める可能性があります。
チリ戦で勝利するためのポイントは、ボールを持っている選手をどんどん追い越すこと。それによって攻撃に厚みが生まれ、チーム全体の推進力につながります。ディフェンスラインも積極的に押し上げていく必要があるし、全員が運動量を惜しまずプレーしてほしい。カナダ戦と英国戦ではフリーでもボールを下げるプレーが目立っていましたが、ボール保持者を追い越していくことは意識一つで変えられるはずです。そうすることで勝利に必要な得点が生まれると信じています。
チリ戦は負けたら大会が終わってしまう戦いなので、自分たちが追い込まれていることを自覚して戦ってほしい。もっと戦えるだろうという期待も込めて、勝たなければいけない試合であることを強調したい。
精神論はあまり語りたくありません。でも必死さ、ガムシャラさ、勝利への執念がなければ技術や戦術がどれだけ優れていても勝てないし、見ている側の人の心も動きません。うまいだけ、キレイなだけ、カッコ良くやるだけでなく、いかに泥臭く戦って120%の力を出し切れるか。それが、なでしこジャパンの命運を握っています。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)