リオ五輪で生まれた2人の柔道金メダリスト 日本男子はなぜ再び世界で勝てたのか
ベイカーは「今のルールの中で勝てる柔道を作り上げた」
ただ戦略的な柔道ができるタイプが日本にいないわけではない。その筆頭格はベイカーだ。ベイカーは初戦から準決勝まですべて一本勝ちで決勝に進んだ。迎えた決勝では2分17秒で有効を奪うと、指導2回を受けたもののポイントで上回り、男子90キロ級で日本人初の金メダルを獲得した。
「大野選手は真っ向から組み合って、一本を取る柔道は見ていて気持ちいいですし、日本柔道の目指すところではあります。それと同時に相手の実力を見ながら戦わなければいけない部分もある。ベイカー選手の場合は本人も自覚していると思いますが、戦略的に勝つ柔道なんです。相手の良さを消していきつつも自分の良さを引き出すことで、技に入っていく。今のルールの中で勝てる柔道をベイカー選手は作り上げました」
一本を取りにいく大野と、戦略に優れたベイカー。好対照な2人のスタイルだが、野村さんは最後に“どちらが優れた柔道家か”という観点で見てほしくないと力説した。
「これは強調したいんですが、大野選手、ベイカー選手どちらも『正解』なんです。なぜならば、それぞれにとって一番勝てる可能性の高い柔道スタイルだったからです。大野選手にベイカー選手の柔道をしろと言っては無理だし、その逆も同じです。勝つために自分は何をすべきか。ここに尽きます」
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer