「0-0」の71分間に感じた日本サッカーの進化 松井大輔「相撲に例えるなら寄り切り」
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。23日の開会式を前に22日に行われた男子サッカー初戦、日本代表は南アフリカと対戦し、後半26分に久保建英のゴールで1-0と勝利した。71分間のスコアレスをこじ開け、白星発進した日本。アテネ五輪で10番を背負った元日本代表MF松井大輔(サイゴンFC)はこの試合にどんな「ミカタ」を持ったのか。(構成=藤井 雅彦)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#3
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。23日の開会式を前に22日に行われた男子サッカー初戦、日本代表は南アフリカと対戦し、後半26分に久保建英のゴールで1-0と勝利した。71分間のスコアレスをこじ開け、白星発進した日本。アテネ五輪で10番を背負った元日本代表MF松井大輔(サイゴンFC)はこの試合にどんな「ミカタ」を持ったのか。(構成=藤井 雅彦)
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国際大会における初戦の重要性はあらためて述べるまでもないでしょう。特に今大会は中2日でグループリーグ3試合を戦う厳しい日程で、初戦を落としてしまうと狂った歯車を戻すのが難しくなります。
だから最も重要なのは初戦で勝利し、勝ち点3を得ること。5-0で大勝すれば日本全体がさらに盛り上がるかもしれませんが、少ない点差でもしっかりと勝つことがグループリーグ突破やその先につながります。その意味で、南アフリカ戦を1-0で勝利したことはとても前向きな結果と言えます。
内容面でも日本のボール保持率は60%を超え、常に格上の戦いをしていたので安心して見ていられました。先発メンバーはGKの谷晃生選手と1トップに入った林大地選手を除く9選手が海外組(田中碧はドイツ2部デュッセルドルフ移籍を発表済み)で経験豊富ということもあってか、自信を持って堂々と戦えていました。
そして2列目に左利きの選手が3人並ぶ布陣は興味深かった。中央の久保建英選手と右サイドの堂安律選手は頻繁にポジションチェンジを繰り返し、2人のパス交換から惜しいシーンを作り出していました。少し前の日本代表で本田圭佑選手と香川真司選手が近い距離で絡み、相手の守備網を突破していった場面を思い出しました。
今回はそこに三好康児選手も加わり、さらに流動性が増していたように感じます。ただ久保選手や堂安選手は右サイドにいる場面ではどうしてもカットインするプレーが多くなり、左サイドの三好選手は縦に突破するよりも中央に入ってからのコンビネーションが得意な選手。今後は単独で縦に突破できるタイプの選手を組み込むことで攻撃のバリエーションが格段に増えるはずです。
実際に、後半途中から相馬勇紀選手が左サイドに入ったことで2列目の交通渋滞が解消され、スペースを有効活用できるようになりました。第2戦以降は南アフリカ戦でメンバー外だった三笘薫選手が入っても面白いでしょう。個々の能力は間違いなく高いだけに、森保一監督の起用法や選手交代が楽しみになりました。
そして決勝ゴールを叩き込んだ久保選手について触れないわけにはいきません。サイドチェンジからフリーでボールを受け、カットインから左足を振り抜く。形だけで言えばセオリー通りですが、あの精度できっちりと決め切ることが素晴らしい。フィニッシャーとしても超一流で、文句のつけようのないワンプレーでした。