羽生結弦の連覇なるか 小塚崇彦が語る、五輪の「無意識の意識」という名の敵
元バンクーバー五輪代表・小塚崇彦氏【写真:編集部】
空港に着いた瞬間から「オリンピアン」…五輪独特の「無意識の意識」を生む“空気”
「例えば、ADカード(アクレディテーションカード)をパスポートコントロール(出入国検査)で見せると、どこの国の人でもなく『オリンピアン』として扱われます。ジャパニーズでも、アメリカンでもない。空港内で通るラインも違う。そんなところから、意識せざるを得ない状況がどんどん出てくるんです」
もちろん、自国にいる時から報道は盛り上がり、情報はどんどん耳に入ってくる。さらに、現地に渡れば、そこら中に五輪マークが目に付く。「気持ちは自然と高まってきます」という。
「五輪シーズンで、この大会を目指して頑張ってきた気持ちは前提にありますが、現地に行くと、五輪の感覚は意識しなくても意識するもの。考えすぎると、疲れてしまう。自分の気持ちをいかにフラットにするか、平常心に持っていくかを考えないと、五輪の雰囲気にのみ込まれてしまいます」
自身も「選手村の部屋にいる時から緊張していました」と当時を回想。ポイントはいかにリンクで普段通りの自分を出すことができるか、だ。
「試合前では、いつもと同じような時間の流れで、ごはんとお味噌汁を食べ、出発前にちょっとゲームをやって、会場に向かいました。でも、氷の上に立った時には『やっぱり五輪だ』という感覚があるんです。ただし、そこにフィギュアのいいところが一つある。演技と同時に曲が始まる。すると、曲が鳴った瞬間、いつもの感覚に戻り、いつもと同じように集中することができました」
独特の雰囲気がある五輪。その特別な空気を、男女含めて現役の日本人で経験しているのは、羽生一人だ。14年ソチ五輪で、こうした初体験の重圧と宿敵に打ち勝ち、金メダルを獲得。五輪の舞台に一度立っていることは、何事にも代えがたい武器になるという。