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「結婚したから幸せ、ではなく…」 女性アスリートの人生を豊かに…“多拠点婚”の先に描く未来――カーリング・吉田知那美

「結婚したら強くなれる」の考えには疑問と語る吉田【写真:増田美咲】
「結婚したら強くなれる」の考えには疑問と語る吉田【写真:増田美咲】

若い時から「結婚したら強くなれる」の考えには疑問だった

 愛を伝え、手をつないで心を結び、本音で話し合って絆をより深くしていく。そして河野さんという理解者の存在によって、価値観まで広がっていく。

「私がずっといる氷の世界だけじゃなくて、山の世界に連れていってもらえたことで、初めて行った国があったり、初めて触れる文化、考え方があったり、いろんな人との出会いがあったり、本当に100倍じゃ足りないくらい広い世界を見させてもらっています。スポーツにおける知見を深くして、視点の違いを持つことができているのは夫のおかげです」

 人生の豊かさを感じる瞬間でもある。チームとしての「最大公約数」を探しているのではなく、違う者同士の化学変化による「最小公倍数」を吉田さんは手にしている。それは山の世界から氷の世界を訪れる河野さんとて同じだろう。価値観の広がりは、優先順位を上に置くお互いの競技においても活かされているに違いない。

 しかしながら吉田さんは、女性アスリートにとって結婚は絶対にプラスになる、という考え方の持ち主ではない。結婚というものが別に魔法でも何でもないからだ。

「若い時、結婚したら選手として強くなれるとか、幸せになれるとか、そういう考えって凄く疑問だったんですね。じゃあ結婚していない私たちは弱いのかって、思ってしまった。今、結婚して思うのは、結婚したから強くなった、幸せになったんじゃなくて、好きな人とチームになって一緒に話をしながら、私たちらしい競技生活と夫婦生活を作り上げていることが楽しく、競技に良いエネルギーが循環しているから幸せなんだと思っています。だから私自身、結婚するといいよ、結婚がプラスになるよとはあまり言いたくないというか、正確に言うと正しくはないんじゃないかって。他の国では事実婚であったり、パートナーシップであったり、世界に出ていろんなあり方を見てきましたから」

 お互いを尊重し、好きな人と自分たちのカタチを見つけ、未来を築いていく。結婚はどうあるべきかという固定観念にとらわれないから、吉田さんと河野さんは「多拠点婚」を選択できたのであろう。

 女性アスリートは結婚、出産、育児というライフイベントに、どのように向き合っていけばいいのか――。吉田さんのスタンスに立てば、自分たちの最適解を見つけ、パートナーと優先順位を決めていくことが大切だと感じられる。ただいずれにせよ周囲の理解、環境整備、バックアップ体制などがなければ始まらない。

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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