甲子園でV、巨人入団…女子野球を“職業”に WBCに続く世界最高峰に挑むパイオニアの矜持――野球・島野愛友利

「何を目指して…」葛藤を乗り越えてきたキャリア
全日本女子野球連盟の公表資料によると、学生やクラブを含めた女子硬式のチーム数と選手数は右肩上がりで増加を続けている。2025年は138チーム、3561人となっており、いずれも10年前の2015年と比べて2倍超に上る数字だ。
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ただ、島野は「学生を終えた先の受け皿をもっと整えないといけないと感じます」と課題感を口にする。競技を続けたくても、選択肢が少ない現実がある。学生カテゴリーを含め、男子に比べて目標設定が難しい競技環境も課題のひとつだ。
自身もまた、その構造の中で揺れ動いてきたひとりである。
男子と同じグラウンドでプレーし、全国優勝も経験した中学時代。しかし高校に進むと、状況は変わる。甲子園という目指すべき場所がイメージしやすい男子に比べ、女子には同等の場所はなかった。「楽しく」という要素も含めてプレーの動機は人それぞれだが、競技力の向上を突き詰めてきた自分自身は何を目指すのか。「どこにもぶつけられない気持ちがありました」と行き場のない感情を抱いた。
それでも、野球を意味する「89」を背負い、「野球がうまくなりたい」という思いだけは揺るがなかった。その一心で日々の練習に向き合い続けると、大きな転機が訪れる。自身が高校3年となって迎える全国高校女子選手権大会の決勝が、女子野球の歴史で初めて阪神甲子園球場で行われることが決まったのだ。
「それまでは自分の成長に重きを置いていましたが、チームとして何が何でも行きたいと思える場所ができました。みんなが同じ方向を向いたことで、練習の雰囲気ががらっと変わりました」。明確な目標の存在が、チームや個々の選手をどう変えるかを体感した瞬間だった。結果、所属した神戸弘陵学園高校は甲子園で全国制覇を達成し、自身は最終回に相手打線を三者凡退に抑えた。
強い充実感を得たのも束の間、その後も葛藤は続く。
野球のみで生計を立てる選択肢がない中、大学に進んで男子野球部に入り、自身のレベルを高めながら4年後の将来を見極める――そんな選択肢を考えていた矢先、巨人戦で始球式を務めることになった。その当日、東京ドームの一室で巨人女子チーム創設の話を伝えられ、同時に1期生としての入団オファーを受けた。NPBでは西武と阪神もすでに女子チームを保有し、女子野球をめぐる動きがにわかに活発化していた時期だ。
だが、即答はできなかった。NPB球団の運営とはいえ、形態はクラブチーム。球団職員として働きながらプレーを続ける形だ。1期生ということもあり、将来の不透明感は拭えなかった。それでも、1か月ほど悩んだ末に入団を決心する。自らの背中を押したのは後進への思いだった。
「ジャイアンツカップと甲子園で優勝をしたことで、下の世代の子たちが同じ89番を着けてくれたり、『憧れています』と言ってくれたりすることが増え、自分の進路が女子選手にとってひとつの選択肢になっていると感じました。ジャイアンツに入ることで新しく開かれる道があるのであれば挑戦したいと思い、入団を決めました」
自分の選択が、誰かの未来につながる。その実感が行動の指針となった。
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