競泳・大橋悠依が闘った「貧血」の体験談 今、SOSを出せない次世代のために贈る助言
競泳の世界選手権2大会連続メダリスト・大橋悠依選手(イトマン東進)が「W-ANS ACADEMY」のインタビューに応じ、女性アスリートを悩ませる貧血について語ってくれました。自身も大学時代に重度の貧血を経験。当初は体調不良の原因がわからず、精神的にも苦悩を味わいました。一般の女性に多いイメージですが、実はアスリートにも身近な貧血。東京五輪で金メダルを獲得したトップスイマーが、選手自らSOSを出す大切さを説くとともに、指導者に個々の問題に応じた「見極め」を願いました。
女子選手に多い貧血、「どん底だった」トップスイマーの体験と助言
競泳の世界選手権2大会連続メダリスト・大橋悠依選手(イトマン東進)が「W-ANS ACADEMY」のインタビューに応じ、女性アスリートを悩ませる貧血について語ってくれました。自身も大学時代に重度の貧血を経験。当初は体調不良の原因がわからず、精神的にも苦悩を味わいました。一般の女性に多いイメージですが、実はアスリートにも身近な貧血。東京五輪で金メダルを獲得したトップスイマーが、選手自らSOSを出す大切さを説くとともに、指導者に個々の問題に応じた「見極め」を願いました。
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何かおかしい。最初は、ただそれだけでした。
大学1年、19歳の冬。いつも通り全力で泳いでも、自分が思っているようなスピードが出ません。タイムも遅い状態が続きました。「それが1か月足らずで凄く酷くなっていった。自分でも何が起こっているのかよくわからなかった」。ちょっとした違和感から始まった大橋選手の異変。スタート直後なのに、200メートルを泳ぎ切ったかのようにしんどい。周囲の選手、コーチも「あれ? どうしたんだろう」と理由がわからなかったそうです。
大学2年となった2015年4月、女子200メートル個人メドレーで出場した日本選手権は40人中最下位に終わりました。日本記録を更新し、世界の舞台で輝きを放つわずか2年前のことです。
「自分も、周りの人たちも体の中に原因があるとは考えていなかった。体に原因があるのか、自分の泳ぎのせいなのか、メンタルのせいなのかよくわからない状態。自分が一生懸命やっていないんじゃないかと思うようになっていました」
努力が足りないと思い込んだそうです。「やる気がないんじゃないか」「もうちょっと頑張れ」。周囲の励ましに応えようと必死になりました。ところが、夏にかけて症状は重くなっていきます。階段を少し上っただけで息が切れました。「ちょっとおかしいな」。はまっていく負の連鎖。次第に心にも影響が出てきました。
「相談する人もあまりいなくなってしまって孤独な感じ。本当にどん底でした」
原因がわからないまま、半年以上を過ごしました。重度の貧血と判明したのは9月のインカレ後です。地元の滋賀に帰省し、ようやく病院で検査を受けてからでした。
「そこからいろんな人と話をして、貧血が原因だったと理解してもらいました。その時はマネージャーさんなど、少なからずどんな時も助けてくれる人がいたのは凄く大きかったです。自分が一生懸命だったかどうかに原因があったんじゃなかったんだと思えたので、凄く安心して救われました」