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部活の恋愛禁止ルールのなぜ 日本「ダメだ、無駄だ」海外「もっと恋をしろ」異なる価値観の理由――女性アスリートと恋愛

伊藤華英さんが次世代に求めたい「人生のオーナーシップ」とは【写真:松橋晶子】
伊藤華英さんが次世代に求めたい「人生のオーナーシップ」とは【写真:松橋晶子】

次世代に求めたい「自分の人生にオーナーシップを」

――管理する側としては自分がコントロールできない領域で、選手をダメにしたくないという心理が働くかもしれません。荒木さんもバレーボール教室などで中高生と接することもあると思いますが、どんなふうに感じていますか?

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荒木「さっき(第5回で)『ゼロ・ヒャク(0か100かの極端な考え方)』の話が挙がりましたが、部活や教育も同じで、良いかダメかの線引きをせず、最初から『これはダメ』と落とし込むと、考える力、学ぶ力、選ぶ力がついてこない。そういう意味で、長い目で選手の人生を見た時に、失敗しながらかもしれないけど、ある程度、自分で考えて決める力をつけさせることは大事だと思います。ただ、個人的な印象ですが、最近はあまり付き合うという恋愛に対して積極的な子は減っているかもしれません」

伊藤「大学で教員をやっていた時、女の子の学生に『なんで彼氏がいた方がいいですか?』と聞かれたことがあって、本人は『めんどくさくないですか?』と。何を言ったら傷つくとか嬉しいとか、いろんな勉強ができると伝えたんですが。もちろん、恋愛に積極的な子もいますが、人間関係を築くのに抵抗がある人も少なくないのかも」

――文化の違いかもしれないですが、海外のアスリートは交際段階からSNSでカップルであることを積極的にアピールする人が多いですよね。

伊藤「だから、別れた時はすぐ分かったりしますね(笑)。海外はカップルをオープンにしてスポンサーを取ってくるような勢い。日本人はそういうことしないですね。芸能人もそう。結婚して初めてオープンになる風潮。事実婚や別姓も認められてないし、そういう背景もあるかもしれないですね」

荒木「私が15~16年前にイタリアでプレーした時は、みんなパートナーが彼氏の段階でも試合が終わったら、真っ先に観に来ている彼氏のところに行って、お客さんがいても平気でチュッチュするんです、それが衝撃で……(笑)」

伊藤「それは海外ならでは(笑)。バスケットボールの富永啓生選手が婚約を発表したのは、凄いなと思いました。婚約の価値感が違うかもしれないけど、日本は婚約レベルは表に出さない。でも、あんな風に日本人がどんどんグローバルになって発信してほしい。嫌味がなく、凄く素敵だったし」

荒木「『それもありだよね』と、みんなが思えばいいんですよね。それもいいよね、これもいいよねって。互いに尊重して、いろんな形が見られるといいなと思います」

――かつて伊藤さんが「褒めてくれる人がいるから頑張れる」と言われたように、競技以外で心を許した人がいる、誰よりも応援してくれる人がいる点は競技のプラスになるかもしれません。荒木さんは現役中に結婚・出産しましたが、パートナーの存在は競技に影響しましたか?

荒木「私は、競技は競技、プライベートはプライベートで、2つを結びつけていなかったですね。付き合い始めた時も競技生活が最優先事項だったし、その後に出産して、いろんな優先事項のせめぎ合いに難しさを感じたけど、私はパートナーができたからパフォーマンス上がる下がるというタイプじゃなかった。ただ、人によっては変わる場合もある。(恋愛で)しんどいことがあったのかな、とか。それも人間らしくていいと思うんですけど、チームを管理する側は『NO』と言いたくなるのかな。自分は別物として考えたし、学ぶこと、エネルギーになることももちろんあった。それが競技にいろんな学びがあるから、スポーツだけやっているとリスクも感じますね」

伊藤「海外だとカップルでパーティーに参加しなきゃいけないというイベントがありますしね。日本にはカップル文化がない。どちらかというと、チームなら友達がいればいいし、楽しければいいという風潮。逆に、そういう場には行っちゃいけないし、やっちゃいけない。競技に影響が出たらいけないから。今の子どもたちは正直に生きないといけない考えが強い。ダメと言われたらダメなのだと、ピュアな生徒、選手も多いと感じます。もちろん、そういう生き方は素晴らしいこと。

 ただ、100%正直でなくてもいいと思います。今の大人世代は隠れてやっていることも普通でした(笑)。その代わり、言いたいのは『自分のことには自分で責任を持ちなさい』ということ。今は子どもが大人化している時代。選挙権は18歳まで引き下げられ、SNSで自分の意見を発信することもできる。自分の人生にオーナーシップを持ってほしい。自分の人生だから人が決めるものでも、決められるものでもない。ただ、人のせいにもできないということを自覚してほしいです」

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