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我が子と一緒にいられぬモヤモヤ 娘を置いて合宿1か月…「あなた子どもは?」悪気ない一言に葛藤――女性アスリートと出産

伊藤華英さん(右)と対談、荒木絵里香さんは現役時代に悪気ない言葉に傷ついたこともあったという【写真:松橋晶子】
伊藤華英さん(右)と対談、荒木絵里香さんは現役時代に悪気ない言葉に傷ついたこともあったという【写真:松橋晶子】

身も心も追い込まれ…何気ない言葉に傷ついたことも

――荒木さんは育児と競技を両立し、後輩たちから相談されることもあったと聞きます。実際にはどんな内容が多いですか? 肉体的負担はもちろん、保育園の少なさや、遠征で家を空ける時などの環境的負担も、社会で働くママワーカーと同じです。

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荒木「大前提として、競技性によりますね。個人競技は練習ができなくても、見てくれるコーチには影響しますが、ほぼ自分の問題。でも、団体競技だと練習に穴をあけるわけにいかず、休めない。それぞれの課題はあります。いずれにせよ、サポートがないと練習にも遠征にも行けない。長期遠征の時にどうするかの問題もあります」

伊藤「私は引退後に出産し、仕事も続けていましたが、自分のモヤモヤとした気持ちがすごく大きくないですか? 誰かが見てくれていると楽なんだけど、そうじゃなくて、子どもといないというだけで、自分がそこに介入していないというだけで、謎の負の気持ちが生まれてしまう。子どものために何かやらなきゃという気持ちがお母さんは常に持っている。合宿になると、1~2か月会えないと聞くし、荒木さんはそれをどうやって乗り越えたんだろうと思っていました」

荒木「確かに。母性が働いてしまいますよね。でも、それも人それぞれですね。一緒にいたい人もいれば、やると決めたら会わない方がいい人もいる。私は後者でした。それぞれの形があるから一概には言えないけどけど、ふと考え込んでしまうことはありますね」

伊藤「そういう時に周りから言われたりすると、何気ない言葉でも、余計に気持ちが落ちてしまいますよね」

荒木「ホントにそう。母親が一緒にいてあげないといけないと自分自身も思う気持ちももちろんあります。例えば、合宿で1か月くらい同じ合宿所でいて、食堂のおばちゃんに毎日ご飯をもらっているけど、『あなた毎日来てるけど、子どもどうしてるの?』って。練習で追い込まれ、体も心も落ちている時にそう言われると、急に泣けてきて。悪気はないと分かっていても、その一言がすごくキツかった。年代は私の母より少し上で、自分で頑張って子育てをやられてきた世代はそう思うのかな……仕方ないと思いますが」

伊藤「そう言われると、ズシッと来ますね。まして体がきつい時に。著しいスピード感で社会の変化が起こる中で、荒木さんのように先駆者的にやられてる人はいっぱい苦い思いもされていると思う。でも、子育ても社会にサポートされて成り立つから難しい。ただ、パパアスリートが子育てを心配されない風潮は何なんだろう?」

荒木「『お子さんにコメントお願いします』とよく言われましたけど、それを男性アスリートに言いますか、と。何を言わされているんだろうと思う時はありました。でも、社会全体がそういう段階だから必要だと分かるし、求められて発信することで変わっていけばと思っていたので、ありがたい部分もありました。私自身は(両立は)やったら楽しかったし、私はいろいろな面で恵まれていました。サポートしてくれる母親や所属チーム……。金銭的な補助ももちろんないとできないので、恵まれて競技が続けられました」

伊藤「すごいお金がかかりますよね、保育園に入れるにしても、ベビーシッターさんをお願いするにしても」

荒木「私は母親にフルタイムで働いていた仕事を辞めてもらい、サポートしてもらったから。それでもお金はかかるのは変わらないですね」

伊藤「生理よりも現実的な問題ですね。実際に子どもという1人の存在がいるわけだから。生理はいろんな女性の環境を考えていく時の入口にある。なぜ女性には生理があるのか、なぜ一生あるのか。初経から閉経まであって、閉経後はどうなるのか。女性を対象にしたヘルスケアや健康課題って今まで言われてこなかった感じがしますね」

荒木「現役中って、生理が妊娠に繋がるとか、そこまで考えていない。だから、無月経や月経不順は問題みたいなことを言われても疎かにしてしまう選手も多い」

伊藤「考えたくなかったからね。競技のパフォーマンスにコミットしている分、そこに視点がない。『とにかく頑張ろう』と競技に集中することが良しとされるから」

 出産をめぐる女性アスリートの実情を語った2人。実際にママアスリートとして活躍した荒木さんはキャリアを考える上で24歳で移籍したイタリアでの経験が大きかったという。第4回では現地で刺激を受けたエピソードを明かし、パリ五輪に出場する岩崎こよみへのエールを送った。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)


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