五輪まで1年半止まっていた生理 登坂絵莉の告白「帰国後、実家に帰った日に再開した」
イベントではこの後、須永教授がデータを用いた講義を展開した。およそ1700人の学生アスリートを対象とした須永教授の調査によると、「月経サイクルによってコンディションの変化を感じますか?」という問いに「はい」と答えた人はおよそ80%。また、630人のトップアスリートを対象とした国立スポーツ科学センター(JISS)の調査で「はい」と答えた人は全体の91%という数値が明かされた。
多くのアスリートにとって月経周期とコンディションが密接に関係している事実。その理由について解説した。
須永「月経中は女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンが非常に低いですが、月経前にあたる黄体期になると両方のホルモンが増加してくる。女性ホルモンの増減がコンディションに影響してくることが分かっています。月経中はおへその下が痛くなったり、頭痛、吐き気を感じたり、貧血になる人もいます。また、月経前である黄体期には2キロくらい増える人もいます。
精神的なイライラも影響してきます。女性ホルモンというと、卵巣や乳腺に作用するイメージが強いかもしれませんが、実は筋肉の細胞、神経、腸など、いろんなところに作用するものなんです。女性ホルモンが低くなったり、高くなったりすることでコンディションに影響します。これは女性だけ。男性ホルモンは月の中で増減がないので、影響がありません」
続いて月経がコンディションに及ぼす変化についても説明した。
須永「月経周期でコンディションが変化する、しないは個人差が大きいんです。月経前、月経中、月経後で調子が良くなるか、悪くなるかを自分で観察することが大切。『アンケートは調子が良い時はいつですか?』と聞いたところ。60%が『月経終了~数日後』と回答しています。月経周期で調子が悪くなる時期はどこかという話をしてきましたが、逆に良くなる時期があることもぜひ知って欲しいです。
また『関係なし』という人もパーセンテージも30%と結構高いです。だから、女性が全員、月経周期でコンディションに波があるかというと、そうでもなく、影響がない人もいます。なので、まずは自分がどうなのか、女性アスリートには自分と向き合って観察してほしいです。指導者であれば、指導している選手がどのタイプなのかを知るということがコンディション管理の面で非常に重要と考えます」
月経周期をコントロールする上で用いられるものがピル。ここ数年、アスリートも服用する選手が増えていると言われるが、その実情が語られた。最初は、伊藤さんが初めて出場した08年北京五輪で経験したエピソードから。
伊藤「私は北京五輪に23歳の時、競泳が行われる8日間の日程がぴったり月経期間と重なることが分かり、ピルを服用しました。当時はまだアスリートがピルを使用する選択肢がすごく少なく、どのピルにどんな作用、副作用かあるか理解しないまま使ったら、体に合わず、体重が3キロ増えて、ニキビができて、人生で大事な時間に後悔することになりました。それはピルを飲んだことではなく、正しい知識を知らず、急に飲んだこと。競泳はピルを使っている選手が多いのですが、一方で『本当にピルって大丈夫?』と思っている選手もいます。レスリング界はどうですか?」
登坂「最近、レスリング選手も使っている選手は多いです。私は(周期を)整えるために一時期使っていましたが、パフォーマンス的には変わらないと感じていたので、途中でやめました。パフォーマンスに影響が出る選手はピルで対処している印象があります」