あの「段ボールベッド」誕生舞台裏 耐荷重200kg、オリパラ選手たちに想い込めた工夫
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。今回は東京五輪で話題となった選手村の段ボールベッド。その裏にあったストーリーを開発メーカーへの取材で迫る。前編は段ボールベッド誕生舞台裏について。寝具から選手たちを支える「ミカタ」とは――。(取材・文=福谷 佑介)
連載「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#63
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。今回は東京五輪で話題となった選手村の段ボールベッド。その裏にあったストーリーを開発メーカーへの取材で迫る。前編は段ボールベッド誕生舞台裏について。寝具から選手たちを支える「ミカタ」とは――。(取材・文=福谷 佑介)
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7月23日に開幕し、日本勢のメダルラッシュに沸く東京五輪。残り期間もわずかとなってきたこの五輪で開幕前から競技とともに話題となったのが、多くの選手たちが時間を過ごす選手村の居室に置かれた“段ボールベッド”だった。
ベッドフレームに段ボールを採用し、90センチとやや狭い横幅も相まって一時は“アンチセックスベッド”とも称されたこの段ボールベッド。実際のところ、そこには、様々な想いが込められ、オリンピアンやパラリンピアンが100%のパフォーマンスを発揮できるようにと考えられ、このような姿になった。
そこで、段ボールベッドを手がけた「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会オフィシャル寝具パートナー」であるエアウィーヴ社の広報担当者に、知られざる「段ボールベッド」の開発秘話や同社の想いを聞いた。
エアウィーヴ社は東京五輪の選手村に1万8000床ものベッドとマットレスを提供。段ボールでできたベッドはその物珍しさもあり、多くの選手がSNSにベッドの写真や動画をアップするなど、国内外のメディアに取り上げられて話題となった。
では、なぜ「段ボール」だったのか。同社の広報担当者は「選手村に入れる寝具ということで、たくさんのリクエストがありました。それをクリアするために試行錯誤を繰り返した結果、辿り着いたのが段ボールでした」という。選手村はオリンピアンだけでなく、パラリンピアンも使用する。入村してくる誰もが不自由なく生活を送ることができ、競技に集中できるように、と、ベッド1つとっても組織委員会から細かな要望があった。
車椅子の選手でもスムーズにベッドに移れるようにするため、ベッドの座面はマットレスも含めて50センチ以下であること、車椅子でも不自由なく居室内を移動できるようにベッド幅は90センチとして導線を確保すること、そして、限られた空間を有効に活用するために、ベッド下に選手の荷物やスーツケースを置けるように空間を設けること、などなど。細かな要望が大会組織委員会からエアウィーヴ社にあったという。