パリ五輪

　パリ五輪は1日、ボクシング女子66キロ級2回戦が行われ、イマネ・ケリフ（アルジェリア）がアンジェラ・カリニ（イタリア）に勝利した。開始46秒でカリニが棄権。ケリフは昨年の世界選手権で性別適格性検査に不合格となり、出場権を剥奪された過去がある。カリニの母国イタリアの首相が「参加すべきではない」とコメントするなど騒動に発展しているが、英ジャーナリストは「これはケリフのせいではない」などと見解を示している。

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　初回、序盤からケリフの強打を浴びたカリニは、棄権を選択。納得いかない様子で怒りの声も上げていた。ケリフの勝利が場内にコールされると、カリニは膝をキャンバスにつけて号泣。握手などは交わさずリングを降りた。カリニは試合後、「私は自分のためにストップした。人生で一番の試合になるかもしれなかったが、あの瞬間は自分の命も守らないといけなかった」などと涙ながらにコメントしていた。

　ケリフは国際ボクシング協会（IBA）主催の昨年の世界選手権でDNA検査を実施した際、XY染色体を持っていることが証明されたとして出場権を剥奪された経緯もあり、波紋は大きく広がっていた。

　批判的の声が目立つ中で、カリニに同情的なのは英紙「テレグラフ」に所属していたジャーナリストのベン・ブルーム氏だ。自身のX（旧ツイッター）で「私たちが知る限りでは（知らないこともかなりある）イマネ・ケリフはパリ五輪に出場すべきではないだろう。彼女の対戦相手にとって不公平であり、極めて危険だ。ただ、彼女に向けられている言葉にはぞっとする」とケリフへの誹謗中傷をけん制しながら、責任の所在について見解を続けた。

「これはケリフのせいではない。責任はボクシングの権威とIOCにある。ケリフはただ（間違って）許されていることをしているだけだ。数年前に、キャスター・セメンヤが似たような状況を経験した際には、多くの人々が彼女に関わる全ての人々にとってどれほどひどい状況かを認識し、彼女に値するリスペクトを持って接していた。数年が経ち、全ての共感が人間のことを考えない純粋な敵意にとって代わられてしまった」

　また2022年の世界選手権でケリフを破ったエイミー・ブロードハースト（アイルランド）の言葉に「耳を貸す必要がある」として、「彼女は何も“ズル”はしていないと思う。それが彼女が生まれた形であり、彼女にはコントロールできないものよ……恐らく、彼女は女性だとして育てられてきたのかもしれないわ……」というコメントを紹介した。

　そして、ブルーム氏は「女性は守られなければならない。女性のスポーツは守られなければならない。しかし、言葉の問題はセメンヤが経験したものから数年後にここまで変わってしまうというのは心配だ。関わるもの全てにリスペクトを示すことは難しいことではない」と締めくくった。

　国際オリンピック委員会（IOC）は1日、公式サイトで「パリ2024ボクシング部門とIOCの共同声明」を発表。ボクシング女子競技で生まれている騒動を念頭に「全ての人間に差別を受けることなくスポーツを行う権利がある」「2人の選手が現在受けている中傷に悲しんでいる」などと強調している。