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フランスはなぜ柔道大国になったのか 普及の裏に一人の日本人…「これが柔道なのか」衝撃だった稽古初日

1951年、フランス・トゥールーズ修道館柔道クラブ師範に就任【写真:田中博子さん提供】
1951年、フランス・トゥールーズ修道館柔道クラブ師範に就任【写真:田中博子さん提供】

教会に部屋を間借り、「漢字」に夢中になったフランス人

 1か月の船旅の末、フランスに着き、道場で練習を見た安部は驚愕したという。

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「まずフランス人の柔道、いわゆる川石メソッド式柔道を見てびっくりしたそうです。『これが柔道なのか』と。はっきり言って、美しいもんじゃなかったというふうに安部先生は話していました」

 危機感を覚えた安部は、日本の柔道を一から指導することを決意。教会に部屋を間借りし、語学学校に通いながら、フランス人に柔道を教えることに明け暮れた。

 川石メソッドでは躊躇された技の名前も、安部は日本語で教えた。すると、フランス人からは意外な反応があった。

「川石さんが杞憂したように、技を覚えられない、技の名前を覚えられないどころか、そこに興味を持った。技にそれぞれ名前があって、それぞれの名前に意味があるんだということに、フランス人はすごく興味を持った。例えば、この技は出足払いっていうんだよ。出足というのは、足が出てくるという意味だよ。それを払うということだよと教えて。字に意味があることが、彼らにはピンとこない。彼らにとって漢字は、すごくミステリアスなオリエンタルマジックなんですよね。そこをくすぐられたようです」

 欧州滞在中の写真には、ボードに「KATAMEWAZA」「KATA」と書き、日本語で「肩」「型」「方」「端」と漢字を説明する安部の姿が残っている。

 漢字や日本語を教えながら、日本の文化として、柔道を紹介する安部の指導法はやがてフランス中に知れ渡っていく。

「南フランスで柔道を指導し始めましたら、パリの人たちも、なんか南のほうで本格的な柔道を教えてくれる先生がいるらしいよという評判が上がってですね。週末になると、パリからわざわざトゥールーズまで来て安部先生の指導を受けるなんていう人たちも現れてきたようですね」

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