レフェリー音声から伝わる新たな魅力 審判が何度も「ありがとう」と繰り返す理由
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会をテレビ観戦していると、実況アナや解説者の声に重なり、中継のそこかしこでレフェリーの声が聞こえる。他のスポーツではあまり見られないことだが、ラグビーでは主審がマイクを付け、試合中にどんな裁定をしているのか、選手とどんな会話をしているのかが、すべて聞こえるようになっている。
他のスポーツにはないレフェリーのマイク装着、選手との会話も全てオンエア
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会をテレビ観戦していると、実況アナや解説者の声に重なり、中継のそこかしこでレフェリーの声が聞こえる。他のスポーツではあまり見られないことだが、ラグビーでは主審がマイクを付け、試合中にどんな裁定をしているのか、選手とどんな会話をしているのかが、すべて聞こえるようになっている。今大会では、取材メディアにはレフェリー音声(主審・線審・TMO)が聞こえるスマホアプリが用意されており、日本のトップリーグでは昨季から秩父宮ラグビー場で観戦するファンに向けて、FMラジオを通じて音声を聞けるサービスを始めている。
マイクから聞こえてくる音声に耳を澄ますと、ラグビーの一味違った魅力が伝わってくる。レフェリーはしきりに「早くラックから出て」「ボールを持ちすぎない。手を離して」「今のタックル、少し早いよ」など、選手たちに“アドバイス”を送る。同じアドバイスが何度か繰り返されると「次、やったら笛を吹くよ」「次、気を付けてね」と“警告”。選手がそのアドバイスや警告に従い、反則を犯さずにスムーズに試合を運ぶと、レフェリーは「ありがとう」と感謝するのだ。開幕戦の日本対ロシアでも、レフェリーが「Thank you very much」と何度も言っていたことに気付いた人も多いだろう。
ラグビーのレフェリーは、反則を見つけて罰を与えることよりも、選手の安全を守りながら不用意に試合を切らさずに続行することを目的としている。そのため、反則があった場合でもプレーが中断することなく、反則を受けたチームがボールを持って攻撃を展開していれば、アドバンテージの合図を出したまま、プレーを続行。反則を取って試合を再スタートさせた方が、反則を受けたチームに有利になると判断すれば、笛を吹いて試合を止める。反則を罰すること以上に、試合の流れを重要視しているからだ。