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選手、監督、研究者…“3足のわらじ”は「忙しくて大変」 35歳・高谷惣亮がロス五輪を狙うワケ

会場隣のライトアップされたケヤキ並木を背に14大会ぶりの銅メダルを手にする高谷惣亮【写真:編集部】
会場隣のライトアップされたケヤキ並木を背に14大会ぶりの銅メダルを手にする高谷惣亮【写真:編集部】

「どうせやらないでしょ」と思われることは…

 選手以外の雑用も多く、体調管理も大変。「事務作業でパソコンを打っていると、つい手持ち無沙汰で」お菓子をつまみ、気が付いたら5キロオーバー。若いころと比べたら減量も厳しいはずだが「妻が料理などでサポートしてくれました」と感謝した。

 トレーニング量も選手と同じ。「全部一緒ですね。自分がやることで、選手への刺激にもなる」。だからこそ「ロス(五輪)は?」の質問に「もちろん、狙っています」と答え「あえて言います。目指します」と続けた。「選手たちに『どうせやらないでしょ』と思われるのはよくないから」と自らを追い込んだ。

 多忙な中で選手としてマットに立ち続けるのは、レスリングが好きだから。さらに、レスリング界や母校拓大のために自らの経験を還元したいという思いもある。

 長くレスリング界を引っ張ってきた。五輪に初出場した12年ロンドン大会後から21年東京大会まで、男子日本代表のキャプテン。女子の活躍ばかりが注目される中で「男子も頑張っている」ことをアピールしてきた。

 もっとも、女子に比べて世界の壁が厚い男子は苦戦してきた。12年ロンドン五輪で米満達弘が獲得した後、男子は2大会連続で金メダルなし。14年世界選手権で準優勝した高谷も最も激戦の中量級で16年リオデジャネイロ、21年東京と五輪出場を続けたが、期待されたメダルには届かなかった。

 出場を逃した今年のパリ五輪では、男子が女子と同じ大量4個の金メダルを獲得。「うれしかったですね」と若い選手たちを称えながらも「悔しい思いもあった」と本音を明かした。「僕は五輪で勝てない男ですから」という自重気味な言葉の裏には、不遇の時代を支えてきた自負もある。

 発信力は相変わらず。13回目の優勝を逃しても、優勝者以上に多くのメディアに囲まれる。人気テレビ番組「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」には女子金メダリストの「世界1位」鏡優翔とともに「世界2位」として出演。レスリング界の「アピール」に一役買った。

 監督として後進を育て、研究者として競技を追求し、レスラーとしてマットに上がる。そして、ポジティブな言葉でレスリングの魅力を発信していく。「忙しくて大変です。でも、やり続けたい」。高谷の情熱は、少しも衰えていない。(荻島弘一)


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