韓国との大きな違い「運動から離れても別の道が」

　同高野球部の佐々木洋監督にも取材。「単なる野球選手を育てることを目的としない。野球もできる素晴らしい人間を育てるのが目標だ」「運動部の監督は技術的な助言者にとどまらず、部員がどんな夢を抱いても可能性を活かすメンターとなって、進路相談もしばしばする」と韓国との違いを挙げている。

　また、大谷が高校時代に「8球団のドラフト1位指名を受ける」という目標設定と実現のために利用して有名となった「マンダラチャート」についても、同高では全生徒に配られているとし「多くの野球部員は、野球と関係のない目標を立ててすぐにすべきことと合わせて思い悩む。年俸1000万円の会社に就職したり、試験で100点を取ることが目標の部員もいる」とさまざまな“活用法”を紹介した。

　その上で「花巻東は、生徒が生きる上で必要な“人生の筋肉”を育てるのを重要視している。皆に例外なく学業を徹底させるのもそのためだ」として、スポーツだけの生徒が生まれないシステムを称賛。赤点を取れば部活が禁止されると紹介し、これも「引退後の生活まで見通すためだ」と位置づけている。

「田舎の高校の野球部に100人を超える部員が集まるのもこの哲学のためだ。ただ運動だけに全てをかける人生を強要しないので、学生や両親の立場では負担が少ない。運動から離れることになっても別の道があるからだ」

　記事は「おかげで日本は選手層が厚い。このシステムは野球だけでなくサッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上など全ての競技に適用される。日本スポーツの底辺が広い理由だ」と締めくくられている。