桃田ケントがスーパーマンに変身? 相手も地元大観衆も困惑させた11連続得点の大逆転
人が変わったようだった。地元観衆の大声援を背に受け、切れ味のある強打を決めまくっていたインドネシア人選手の球が、急に相手コートから戻って来るようになった。ファイナルゲームで8-15とピンチに陥った桃田賢斗(NTT東日本)が、フットワークのギアを上げた。
バドミントン男子団体準決勝、地元選手に最終ゲーム8-15から大逆転勝ち
人が変わったようだった。地元観衆の大声援を背に受け、切れ味のある強打を決めまくっていたインドネシア人選手の球が、急に相手コートから戻って来るようになった。ファイナルゲームで8-15とピンチに陥った桃田賢斗(NTT東日本)が、フットワークのギアを上げた。
「自分が諦めるわけにいかないと思った。インドネシアの応援がすごく盛り上がっていて、この流れで次(の園田、嘉村ペア)に渡したら、チーム自体が危ないと思った」
米国の人気劇画スーパーマンの主人公クラーク・ケントに名前の由来を持つ桃田が、スーパーマンに変身した。
インドネシアの首都ジャカルタで開催されている第18回アジア競技大会のバドミントン競技は、21日に男女団体の準決勝を行い、男子の日本代表は、1-3で地元インドネシアに敗れて銅メダルとなった。メダルの獲得は48年ぶり。バドミントンを国技とするインドネシアの大観衆が作り出す雰囲気は特別で、相手選手の勢いはすさまじかった。その中で唯一白星を勝ち取ったのが、第1シングルスの桃田(世界4位)だった。6月のマレーシアオープンで大苦戦したアンソニー・ギンティン(世界12位)と対戦。会場の風に慣れないまま、声援で勢いに乗るギンティンに押されて第1ゲームを14-21で失った。桃田は、追い風を気にしてコントロールに気を使い過ぎたという。対するギンティンは、エンジン全開。フットワークが速く、打点の高いジャンピングスマッシュで鋭角にシャトルをたたき込んだ。ラリーで桃田が振り回され、相手を崩しても前に入り切れず、決めに行くことができなかった。第2ゲームは反対コートから押し込み21-14で取り返したが、ファイナルゲームは8-15と追い込まれた。
しかし、桃田は蘇った。
「ここは、もう明日、試合ができなくなっても良いという気持ちで最後までしっかりと足を動かしてできたのが勝因。本来なら、自分が下(低い位置)から取ってもしっかりとコントロールをして、相手を疲れさせる作戦だった。でも、そういうわけにもいかなかったので、最後は、相手の(ネット際からネット際に落とし返す)ヘアピンに対して、自分がなりふりかまわず前にダッシュしたら、相手が先に動けなくなっていた」
相手より先に動いて先手を取り、ネット前への返球を技術勝負に持ち込まず、上から叩いて押し込んだ。相手のギンティン、そして地元の大観衆が困惑する中で、桃田は連続11得点。「18-15のときに仲間を見て、すごい必死に応援してくれていた」と話し、最後は21-16で押し切った。大逆転勝ちを収め、ラケットを右手に持ち帰ると、左腕で渾身のガッツポーズ。「勝てて良かったと思ったし、弱気だった自分に対して喝を入れたところもあった。少し点差が開くと、相手が勢いに乗っているのが分かるので少し弱気になってしまったかなと思う」と振り返る大きな勝利で仲間につないだ。残念ながら後続が敗れて決勝進出はならなかったが、エースの意地を見せて存在感を示した。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)