性的画像問題にある盲点 「見られて減るものじゃないし」薄かった選手側の被害者意識【THE ANSWER Best of 2021】
ショックだった会場トイレの盗撮画像、ユニホームの機能性と露出のバランスは…
それでも、大山さんにとって忘れられない出来事がある。Vリーグの会場で撮影したものとみられる女子トイレの盗撮画像が出回ったこと。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」
(W-ANS ACADEMYへ)
「あの経験は仲間とも笑えず、一番ショッキングでした。バレーボールはユニホームの背中に名前が入っているので、誰であるかも特定されてしまう。私が所属していた東レのものはありませんでしたが、他のチームで友人の画像が出回っていて大丈夫かと心配になりました」
以降は警備も強化されたが、大山さんの所属チームは探知機を独自に購入。毎試合、会場入りするたびにマネージャーがトイレの中をすべて調べ、安全が確認された上で使用することに。女性アスリートが性被害の対象にされた一つの事例といえる。
性的画像問題を考えるにあたり、ユニホームの問題も関連性が指摘されている。
特に陸上、ビーチバレーは肌の露出が多く、被害の対象になりやすい。ユニホームを巡っては機能性を求め、抵抗感が少なく、競技力向上のために必要という側面はある。しかし、そのメリットと興味を惹くための線引きが曖昧になり、問題が起こることがある。
例えば、バレーボール界で大山さんの現役時代に起きた変化も、その一つだ。
「選手のおへそを出そうと、ユニホームのシャツが短くなりました。当時は女子プロゴルファーの人気がすごくて、宮里藍選手、横峯さくら選手に負けるなという空気。ゴルファーはスイングする時におへそが見えていたので、バレーボールもスパイクを打つ時におへそが見えるようにしようとなり、ユニホーム(シャツ部分の腰回り)が短くなりました。私自身はそれが嫌で、意地でも見せないようにシャツを短パンに入れていました。
でも、結局、スパイクを見せる時に見えていました。機能性より“見せる”という形で人気を獲得する方向に行っていた時期があったのは事実です。その頃、FIVB(国際バレーボール連盟)自体が体のラインを綺麗に見せるためにピタッとしたデザインにしたり、ノースリーブにしたり、短パンの股下部分の長さを決めたり。ビーチバレーも同じです。パンツの横の幅を何センチなんて決めるのは、おじさんのやることと思っていました」
結局、へそ出しユニホームについては大山さんのようにシャツに入れて隠す選手もいれば、頭からボールに飛び込むフライングレシーブの際にコートに腹部を擦って故障の危険を味わった選手もいて、1年で廃止になったという。
「体が綺麗に見えるに越したことはありません。カッコ良く、スタイル良く見えた方がうれしい。子供たちも『あんな選手になりたい』と憧れを持つ、一つのきっかけになります。そういう意味では美しさを求めるべきと、選手の立場として思っていました。一方で、そうじゃないなと(行き過ぎた部分を)感じ、モヤモヤすることがあったこともありました」
会場内にいるファンは健全に撮影を楽しんでいる人が圧倒的に多い。その写真をSNSなどに掲載することで、競技の認知につながることも事実。だから、一律に会場内の撮影禁止にすることはできない。“見せる”と“守る”のバランスについて「本当に難しいです」と大山さんも言う。
「ファンの方には写真を撮ることを楽しみに来てくださる方もいます。本当に良い写真を撮ってくれて、それらをまとめて本みたいにして選手にプレゼントしてくれる人もいる。そういうものは選手にとっても、すごく励みになります。だからこそ、一律に撮影禁止にするというのは違うと思うし、一方で選手を守るとなると、どうしたらいいのかというのは難しい問題です」
現時点で正解は一つではない。だからこそ、時間をかけてでも解決していくべき問題だ。