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タブーだった女性アスリートと恋愛 マラソン下門美春が「私の恋愛」を公にした真剣な理由【THE ANSWER Best of 2021】

東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は陸上の現役プロマラソンランナー・下門美春さんが登場する。

「女性アスリートと恋愛」について語ったマラソン・下門美春さん【写真:荒川祐史】
「女性アスリートと恋愛」について語ったマラソン・下門美春さん【写真:荒川祐史】

「THE ANSWER the Best Stories of 2021」、現役選手が語る女性アスリートと恋愛

 東京五輪の開催で盛り上がった2021年のスポーツ界。「THE ANSWER」は多くのアスリートや関係者らを取材し、記事を配信したが、その中から特に反響を集めた人気コンテンツを厳選。「THE ANSWER the Best Stories of 2021」と題し、改めて掲載する。今回は陸上の現役プロマラソンランナー・下門美春さんが登場する。

「THE ANSWER」は3月8日の「国際女性デー」に合わせ、女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を企画した。「タブーなしで考える女性アスリートのニューノーマル」をテーマに1週間、7人のアスリートが登場。7つの視点でスポーツ界の課題を掘り下げ、4日目の「女性アスリートと恋愛」のテーマに下門さんが登場した。

 現役アスリートでありながら、文章、写真などの投稿サイト「note」で過去の恋愛を赤裸々に綴った下門さん。「女性アスリートの恋愛事情はベールに包まれている」と感じながら、実体験を公にした理由とは。一人のアスリートとして感じる恋愛がしづらい理由、必要以上に隠さなければいけない現状への疑問にも触れ、そこに女子選手の“競技しか知らない人生”の危うさが見えた。(文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 女性アスリートは恋をしてはいけないのか。スポーツ界をなんとなく覆っていて、でも誰も語ることがない。そんな空気に一石を投じるように、下門美春さんは昨年5月、「note」に1本の記事を書いた。タイトルは「ドキドキは警報。」。

「彼氏いますか? 結婚願望ありますか? どんな人がタイプですか? 、、、よく聞かれる。女性アスリートの恋愛事情ってベールに包まれている。そもそも公に話す場もなければ、話す必要もない。なので今回、私の恋愛。暴露します」

 こんな書き出しで綴ったのは、過去の恋愛体験談。自身を「ドタキャンされ続ける女」とちょっと自虐的に表現し、20代から30歳の今に至るまで、どちらかといえば恵まれてこなかったエピソードをコミカルに、かつ、赤裸々に記した。

 自己ベスト2時間27分54秒。16年の青梅マラソン、昨年の愛媛マラソンなど、国内大会で優勝経験もある。多い月は900~1000キロ走り、自分を追い込みながら、競技と向き合っている現役のプロマラソンランナー。にもかかわらず、だ。

 自ら「ベールに包まれている」「公に話す場も必要もない」と記した女性アスリートのタブーを明かしたのは、なぜか。

「私は『note』をアスリートとしてだけじゃなく、30歳の一人の女性として知ってもらいたいと思って始めました。競技生活は食事も日常の生活も、いろんな制約があったり、周りは子供がいるのに自分は結婚もせず、ふと不安になったり、いろんな葛藤が生まれます。でも、それはほかの選手も同じ悩み。だから、私の体験を気軽に書くことで『悩んでいるのは私だけじゃなかった』と、誰かに思ってもらえるきっかけになればと思って」

「note」にはソフトボール部だった中学時代、バリカンで丸刈りにさせられたこと、21歳に現役を一度引退し、上野駅ナカの呼び込みアルバイトでフリーター生活をしていたこと、その2年間で体重が15キロ増えながら現役復帰したこと、どんな経験も包み隠さず、オープンにしている。

「選手は周りの“○○をしちゃいけない”に縛られることが多いんです。SNSで発信すると『選手なのにそんな時間あるんですか』『そんなもの食べていいんですか』という声も頂きます。でもアスリートも遊ぶ時は遊ぶし、食べる時は食べる。その価値観に縛られすぎて過食になり、吐いてしまう選手がいたし、私も摂食障害に近い経験をしました。閉ざされたところから解き放たれた方が競技もうまくいく。そんな想いで書いています」

「恋愛をしちゃいけない」も、ずっと感じていたもの。

「出会いは恋愛に限らず、必要な時に必要な人とあるものじゃないですか? なのに、恋愛だからダメというのはおかしい。もちろん、恋愛に飲み込まれ、競技が疎かになってはいけない。指導者からすれば、競技に集中できなくなるという理由で押さえつけたいかもしれませんが、選手に成し遂げたいことがあり、その目標を一緒に描けているのなら、選手自身が線引きをするはず。なので、誰かに縛られるものではない気がしています」

 下門さんが言うように、アスリートの本業は競技である。実業団なら所属先、プロならスポンサーから支援を受け、結果という対価を残し、名前を売る。それが、基本的な関係だ。仮に恋愛であっても、それ以外であっても、仕事である競技に影響を及ぼすことは好ましくない。一方で、分別がつく年齢で、自分を律しながら、プライベートの充実を競技に生かせるなら、恋愛をするもしないも個人の自由であっていいはず。

 しかし、実際には恋愛が過度にタブーとされるという。その裏に、女性アスリートが抱える一つの課題がある。

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