「ベトナムでプロ生活を終えようか」 引退考えた松井大輔がFリーグ入りを決めたワケ
苦しんだ先に見えたフットサルへの新たな挑戦
しかしベトナム挑戦は決して平たんではなかった。翌日のトレーニングさえ確定しないもどかしさや監督交代劇もあったが、何よりコロナ禍の影響は大きかった。日本とは異なり、一人でも陽性者が出るとその区画ごとに封鎖された。最初は封じ込めることに成功していたが、少しずつ陽性者が増えていくとついにロックダウンになった。その影響でリーグ再開のメドも先が見えない状況だったという。
「外に出られない苦しみは致命的だった」
今年の6月に始まったロックダウンは現在も継続中。自宅から一歩も外には出られず、軍が運んできた食事を食べる生活を送っていたという。体を動かせるのは屋上と非常階段の踊り場だけ。そこで外の空気を吸いながら、体幹トレーニングができるだけだった。
松井の苦しみは会見で口にした言葉から十分に伝わってきた。
「どういうサッカー人生を歩めばいいのか。何が合っているのか」
それでもやっぱり松井らしく、最後にはチャレンジする道を選んだ。
「チャレンジしたいし、もっと楽しみたい」
39歳でベトナムへ旅立った松井は今、40歳になった。孔子はかつて“四十にして惑まどわず”と言ったが、松井もまた自身のサッカー人生を顧みて、その実績に自信を持ち、進むべき道を確信したのかもしれない。
「挑戦が始まるということでワクワクしているし、サッカー人としてまた子どもに戻ったときのようなプレーができれば面白いなと思うので、ぜひ見てもらえたらうれしいです」
ボールを持ったら必ず1対1を仕掛け、切れ味鋭いドリブルでサイドを切り裂く。あのワクワクするプレーでサッカー界を沸かせた松井が、今度はフットサル界を魅了してくれるに違いない。
(THE ANSWER編集部)