【NBAバズ動画解剖】“イマドキ”のビッグマンが見せた、3点を生む冷静な状況判断「本来ならパスだが…」
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第6回はNBA公式インスタグラムが9月13日に投稿し、21万件を超える「いいね!」が集まった「ヨキッチの冷静な状況判断」だ。
「NBAバズ動画解剖」―プレーオフにSNS上で話題を呼んだ動画を渡邉拓馬が分析
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第6回はNBA公式インスタグラムが9月13日に投稿し、21万件を超える「いいね!」が集まった「ヨキッチの冷静な状況判断」だ。
【バズ動画はこんなプレー】西地区準決勝のクリッパーズ―ナゲッツ第6戦、第3クォーター(Q)残り8分18秒。55-73でリードされたナゲッツは、3ポイントライン外の中央にいたニコラ・ヨキッチがわずかなスペースをドリブルで切り込んだ。相手ディフェンスのイビツァ・ズバッツに体をぶつけられ、体勢を崩されながらもシュート。ふわりと上がったボールはリングに吸い込まれ、バスケットカウントも獲得。ヨキッチはフリースローも決めた。
身長213センチのヨキッチによるドライブで生まれたプレーだが、知ればバスケが面白くなる渡邉氏が見たポイントとは――。
◇ ◇ ◇
このプレーは、通常ならヨキッチがコーナーから上がってくるハリス(14番)にハンドオフでパスを回すプレーだと思います。しかし、いつもハンドオフをすると相手が慣れてくるので、ヨキッチはディフェンスの状況を見ました。マレー(27番)についているクリッパーズのモリス(31番)が、ボールマークから一瞬目を離してしまいます。背中を向けて見ていないその瞬間、モリスの背中側にスペースが一瞬だけできます。
さらにヨキッチについているズバッツ(40番)が少し油断していて、ハンドオフにいくだろうと思って反応が少し遅れています。ヨキッチの重心に比べれば少し内側に体がある。その一瞬のスペースをヨキッチが逃さなかった。本当はハンドオフでいくところをドライブインで仕掛けました。
このスペースは狭い方で、広くはありません。モリスが完全に背中を向けて寄れない体勢にいます。この狭いスペースでもヨキッチは割って入れると判断した。彼が抜ければ、クリッパーズはゴール下にレナードとジョージがいて、ナゲッツは3対2のアウトナンバー(数的優位)になれる。ヨキッチもファウルになるとわかっていてシュートを打った。バスケットカウントになるように狙いましたが、入らなくてもフリースローはもらえたシーンです。
本来ならハンドオフで画面上にいるハリスにパスをしてからピック&ロールの展開になるところ。それをヨキッチは常にディフェンスの配置を見てアジャストした。このように型にハマらないのが良い選手の特長です。普通のインサイドプレーヤーだったらプレーの途中で(通常と)外れたプレーをする選手はあまりいませんが、彼は器用でオールラウンダーに近い。ディフェンスの状況を見ながら、一瞬の隙を突いたプレーができます。
あとは体を寄せてファウルをもらいにいきました。少し演技の要素も入っていると思いますが、体の寄せ方もアウトサイドの選手のように上手。ファウルを誘い、バスケットカウントでビッグプレーに繋がりました。クリッパーズのディフェンスというより、ヨキッチの状況判断が素晴らしかったです。
ヨキッチのプレーはアウトサイドの選手なら普通のことですが、彼のようなインサイドの選手ができるのが、NBAの主流になってきています。彼はシュートもうまいですよね。ファウルのもらい方もうまく、パスもできる。自分が抜いてからもアウトナンバーになり、パスも出せます。ディフェンスは本当に気が抜けない選手です。
NBAでは昔のようにゴール下にずっといるプレーヤーがいなくなり、3ポイントエリアの外からボールを運ぶし、シュートも打つ。PGのような働きをしているビッグマンが増えているという印象です。バスケIQが高く、シュートレンジの広さとプレーの幅を広げているインサイドの選手が増えていますね。
◇ ◇ ◇
213センチ。129キロの体格によるダイナミックプレーとは裏腹に、冷静で的確な状況判断が光ったシーン。ナゲッツはこの試合を111-98で勝利を収めた中、ワンプレーで3点をもぎ取る大きなプレーとなった。
(THE ANSWER編集部)