成長期のジュニア選手が取るべき食事・栄養 偏食がある子どもはどう対応したらいい?
「見える化」して、選手自身も保護者も巻き込む
――育成年代の中でも、年齢によって気をつけるべきことはあるのでしょうか?
「あまり年齢を気にする必要はありません。成長には個人差があるので、この学年ならこれくらい身長がなければいけないと決めることはできません。それよりも自分の身長・体重を測定し、知ることを大事にしてほしいですね。身長はどれくらい伸びているのか。体重はどれくらい増えているのか。最低この二つは把握し、部活動やクラブチームの中で管理できているといいですね。自分の身体の状態を知らないままプレーをし続けるより、データを見ながら調整することで怪我を防ぐことにもつながりますから」
――とはいえ、子どものうちから健康を意識するには、ハードルが高いようにも思います。
「ですから、根気強く言い続けることはもちろん、トレーナーや監督、コーチ、保護者が連携してチームを組み、身体づくりに必要なことや栄養摂取における知識を伝えることをおすすめします。
周りの大人たちがチームを組むことで、健康を意識してもらう機会を増やすとよいと思います。いろいろな大人が声をかけ続けることで、子どもを巻き込んでいきやすくなるんですね。子どもたちは、スポーツへの向上心があるため『身体づくりは、競技で活躍するために必要なことなんだよ』『健康に気をつけると、もっとプレーがうまくなるよ!』と効果とセットで説明すると実践につなげていけると思います。
また、成果を『見える化』してあげるとモチベーションも上がりやすく、健康への意識も向きやすくなります。保護者が食事づくりをする際に気をつけていただくこともできます」
――「見える化」というと……?
「食事に含まれる栄養素の内容や、身体の成長の様子をグラフにして表示するんです。そうすることで、どんな努力をしてどれだけ改善したのかをチームで共有できるんですね。数値が伸びていたらうれしいですし、また頑張ろう! となるじゃないですか。子どもだけでなく、保護者も同様です。『自分が作った食事に何が足りてなくて、どう改善したら良いかがわかるとありがたい』という声もあります。言葉で伝えるだけでなく、結果を『見える化』してチームと保護者などの関係者で共有することもおすすめです」
――食事を「好き・嫌い」なく食べることも大事だと思うのですが、偏食がある選手にはどう伝えていくといいでしょうか。
「嫌いな食べ物に必要な栄養が含まれるなら、代わりになる別の食べ物を食べるしかありません。しかし、家庭では代わりのものを選ぶことができても、好き嫌いが激しいと合宿や遠征先、寮で出される食事を食べられないケースもあります。そうすると、環境の変化によってコンディションを崩しかねません。そういった意味でも、なんでも食べられる子にしてあげるのが一番なのですが。
子どものうちから、自分の身体を管理し調整する習慣がつけば、大人になっても健康に気を使った食生活を続けられます。育成年代は、そのチャンスだと思って、周りの大人がサポートし続けてほしいですね。これからも現場で役立つスポーツ栄養の情報を、お届けしていければと思います」
■小澤 智子 / 管理栄養士・株式会社ユーフォリア「ONE TAP SPORTS」ユーザーサポートチーム所属
1983年生まれ、新潟県出身。筑波大学大学院 体育研究科修了後、健康計測機器メーカーの研究開発部門に勤務。スポーツ栄養学を専門とし、多くのプロアスリートやジュニア選手の身体組成評価・栄養サポートに従事する。2014年サッカーW杯ブラジル大会では、男子日本代表のコンディショニングサポートも担当。現在はユーフォリアにて、ユーザーチームの栄養サポート、新規事業開発などに従事する。
(記事提供 TORCH)
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(THE ANSWER編集部)